飛驒工(読み)ひだのたくみ

改訂新版 世界大百科事典 「飛驒工」の意味・わかりやすい解説

飛驒工 (ひだのたくみ)

奈良時代から平安時代前期にかけて,飛驒国の農民が労役として,里(り)ごとに10人ずつ1年交替で都に上り働いた。彼らは木工寮その他の建築関係の官庁に配属され,飛驒工と呼ばれたが,農民の労働である点からみて,高度の専門技術を持つ工匠でなく,材木の荒削りのような単純な工作を担当したと考えられる。彼らが当時の建築工事組織で指導的地位を占めたことを示す記録も存在しない。しかし,この労役制度が実施されなくなった平安後期になると,《今昔物語集》や《新猿楽記》のなかに飛驒工を名工として扱った説話が現れる。《今昔物語集》では,平安遷都のときに内裏の建築などで活躍した有名な飛驒工という工匠が,有名な絵師百済河成(くだらのかわなり)とわざくらべを行う話が述べられており,《新猿楽記》では,登場人物の一人の檜前杉光を内裏の建築を指導する名工で飛驒の国の出身と述べているが,ともに史実ではない。
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