改訂新版 世界大百科事典 「香取文書纂」の意味・わかりやすい解説
香取文書纂 (かとりもんじょさん)
常陸国土浦の国学者色川三中(1802-55)が田制研究の資料として,香取神宮とその社家の所蔵する文書を影写し,家別(ほぼ編年順)に編集した古文書集。62巻。6年を費やし1848年(嘉永1)に完成したもので,下限は江戸中ごろに及ぶ総数1500余通を収める。採集の範囲と周到は同時代の各種文書集の内でも群をぬいたもので,その後散逸・欠損した文書を補塡できるのみでなく,江戸古文書学の到達点を示すものとしても重要。自筆原本を静嘉堂文庫に,地理局による明治転写本を国立公文書館に所蔵する。目録部分は1884年に(伊藤泰歳補訂,和装1冊),本文も含めて1908年に出版(伊藤泰歳補訂,小杉榲邨・邨岡良弼校訂,香取神宮社務所刊,和装16冊)されたが,かなり取捨・補訂が加えられており,かならずしも色川本の真を伝えてはいない。
執筆者:後藤 紀彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報