高麗蔵(読み)こうらいぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「高麗蔵」の意味・わかりやすい解説

高麗蔵
こうらいぞう

正しくは高麗版大蔵経(だいぞうきょう)という。朝鮮で高麗時代に開版雕印(ちょういん)された漢訳大蔵経(漢訳仏典の大叢書(そうしょ))のこと。麗版(らいばん)、麗本(らいぼん)とも略称する。蜀版(しょくばん)大蔵経や契丹(きったん)版大蔵経の後を受けて11世紀初めに『開元録』に基づいて5000余巻が開版された。これが初雕(しょちょう)版で、その残巻が京都の南禅寺に伝わっている。ついで文宗(在位1047~82)のころ『開元録』以後のものを続刊した。これには蜀版と契丹版のものが含まれ、正続あわせて1524部からなる。また高宗の23年(1236)から15年余りかかって再雕されたのが海印寺版大蔵経で、この版木は伽耶山(かやさん)海印寺(慶尚南道)に現存している。初雕本の版木は元軍の兵火で焼失、現在利用しうる高麗蔵の完本はこの再雕本である。高麗蔵は厳密な校訂本として学術的評価が高い。日本にも多数請来された。東京芝の増上寺(ぞうじょうじ)所蔵の高麗蔵は、明治以降に刊行された『縮冊大蔵経』や『大正新修(しんしゅう)大蔵経』の底本として用いられた。

[岡部和雄]

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