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古くから中国の興安嶺(こうあんれい)東部のシラムレン川流域に遊牧し、10世紀の初め遼(りょう)王朝を建設したモンゴル系の民族。契丹の名を伝えた最初の文献は4世紀の北魏(ほくぎ)王朝の正史『魏書』であるが、8世紀前半のオルホン碑文にはキタイ、8世紀後半のウイグル碑文にはキタン(キタイの複数形)と記されているから、契丹はその音を漢字で写したものであろう。今日、ロシア語、トルコ語、ギリシア語で中国のことをキタイとよぶのは契丹に由来するという。
初めシラムレン川流域にいた契丹族は5世紀には南方に移住し、大凌河(だいりょうが)流域に遊牧した。隋(ずい)・唐時代には営州(現在の遼寧(りょうねい/リヤオニン)省朝陽(ちょうよう/チャオヤン))に住み、首長(しゅちょう)は都督の職を与えられて中国の庇護(ひご)を得ていたが、696年営州に反乱が起き唐軍の討伐を受けてからしだいに移動し、シラムレン川とラオハ川の合流点付近に本拠を移した。契丹は8部ないし10部の部族から構成され、各部は馬をトーテムとする耶律(やりつ)姓と牛をトーテムとする審密(しんみつ)姓(蕭(しょう)姓)との二つの氏族(フラトリー)に分属していたが、唐王朝との闘争を通じて部族が結集して協力するようになった。10世紀の初め、迭剌(てつら)部から耶律阿保機(やりつあぼき)が出ると、それまでの君長互選制を廃止し、907年皇位につき、君主独裁の大契丹国を建てた。阿保機はタングート、吐谷渾(とよくこん)、タタール、ウイグルを攻め、渤海(ぼっかい)国を滅ぼし、927年死亡した。その次男の太宗は中国に侵入して後晋(こうしん)を滅ぼし、947年、国号を大遼国と改めた。
[河内良弘]
『田村実造著『中国征服王朝の研究 上』(1964・東洋史研究会)』▽『愛宕松男著『契丹古代史の研究』(1959・東洋史研究会)』
キタイ(Kitai)ともいう。遼王朝の母体民族。5世紀にはモンゴル高原東部,遼河上流のシラムレン川とラオハムレン川流域の遊牧狩猟民族として知られた。モンゴル草原と遼河下流の農耕地域との中間地点にあって,モンゴルとトゥングース両者の要素を持つといわれ,白馬・青牛の始祖説話を持つ。8世紀には東ウイグル可汗国と唐に服していたが,10世紀初め唐の滅亡と同時に耶律阿保機(やりつあぼき)が8部族の長となり,916年には天可汗(てんかがん)を称して契丹国と名乗った。女真(じょしん),室韋(しつい)などを併せて満洲地域,モンゴル高原,遼河下流域に拡大し,シラムレン最上流の草原に中国風の都城,上京臨潢府(じょうけいりんこうふ)を建設して首都とした。キタイの名は中国の代名詞としてヨーロッパまで伝わった。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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10世紀初めに遼を建てたモンゴル系民族。8世紀前半のオルホン碑文にはキタイKitai,8世紀中頃のウイグル碑文では複数形のキタンKitanの名でみえる。4世紀以来,東モンゴルのシラ・ムレン川の流域で遊牧し,突厥(とっけつ)・ウイグル・高句麗・中国に隷属していたが,10世紀初めに隣接諸部族を征服し,中国北辺を領有して大契丹国を建て,のち遼と改めて2世紀にわたって君臨した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…モンゴルの名は,唐の歴史を記した《旧唐書(くとうじよ)》《新唐書》に見える蒙兀(もうごつ)というのが初出であるとされる。しかしモンゴル族としてはっきりしているのは契丹(きつたん)である。契丹はすでに4世紀にモンゴリア東部,興安嶺東麓で活躍していたことが中国の歴史書に見える。…
…契丹(きつたん)(キタイ)族の耶律阿保機(やりつあぼき)が東モンゴリアに建国し,モンゴリアおよび中国東北部と華北の一部を支配した国家または王朝。916‐1125年。…
※「契丹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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