改訂新版 世界大百科事典 「鳥売」の意味・わかりやすい解説
鳥売 (とりうり)
中世末天文ごろ,京都に鳥を商う座は三条座,五条座,七条座の3座があり,それぞれ内蔵寮(くらりよう),長橋局,駕輿丁(かよちよう)座が本所であった。これを鳥三座という。扱う品物は鳥に限らず,狼,猿,兎,狐,狸,獺,黏等であった。また,鳥餅座の座衆の中に〈鳥屋宿院六郎三郎〉がみえるので,鳥を捕獲する鳥餅についても座が成立しており,鳥屋が鳥餅も売っていたことがわかる。三条座の前身は供御人(くごにん)であり,鎌倉中期に御厨子所(みずしどころ)が三条以南の〈魚鳥精進(野菜)菓子交易の輩〉を御厨子所供御人と認め,かわりに商売に課税したといわれている。1333年(元弘3)の内蔵寮領目録には,六角町生魚供御人等と並んで鳥供御人が記されており,毎年鳥40羽を内蔵寮に貢納していた。このように,鎌倉・南北朝期には鳥供御人は内蔵寮の支配下に鳥売を行っていたのである。先述の三座は鳥の専売権をもっていたが,1544年(天文13)に祇園社犀鉾神人である柑類(こうるい)の座が,専売権を侵して鳥を販売し,鳥三座に訴えられている。このとき,内蔵頭山科言継は,柑類の座の鳥・魚販売は古くから承認されているといっているが,このような事態は座の規制をこえた自由営業が広くあらわれるきざしといえる。
執筆者:田端 泰子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報