〈こしかき〉ともいう。奈良時代以降,朝廷に属して,主として天皇の行幸のさいその輿(こし)をかついだり,輿の前後につけた綱を手にとったりして行歩した下級の職員の呼称。《続日本紀》の宝亀11年(780)3月辛巳条にこの語が見え,駕輿丁がその任務に従事することで庸調を免除されていたのが知られる。平安時代,927年(延長5)に成った《延喜式》によると,駕輿丁は〈四府(しふ)〉,すなわち左右近衛府と左右兵衛府とに直属し,前者では左右各100人,計200人が,また後者では左右各50人,計100人が従事した。官舎は都の〈諸司厨町(しよしくりやまち)〉の一角におかれ,家族生活を営みつつ四府の輿宿(くるまやど)(車庫と控室)に出勤した。鎌倉時代には公費の逼迫で俸給にも事欠くようになり,朝廷の了解のもとで課税は免除されながら諸種の商工業を営み,生活の資とするものが増加して,四府駕輿丁座(しふのかよちようざ)という同業者組織も生まれた。以降,室町時代にかけて,課税免除の特権に魅力を感じた商工業者の中から駕輿丁に加えられることを希望する者が続出した。駕輿丁座の中には,紙折敷(かみおしき),薬並びに唐物(からもの),白布,酒麴(しゆきく)並びに酒,馬,銅,材木,味噌,高利貸,素麵(そうめん),綿などを扱って課税免除の特権のみを有する座組織と,錦並びに組(くみ)(組糸),鳥,古鉄,絹,帷(かたびら),呉服,米などの専売権をも併有する座組織とが形成されていた。天下統一後は営業上の特権は解消されたが,四府駕輿丁座の〈座衆〉であることは商工市民にとっては名誉と意識された。
執筆者:横井 清
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…奈良時代以降,朝廷に属して,主として天皇の行幸のさいその輿(こし)をかついだり,輿の前後につけた綱を手にとったりして行歩した下級の職員の呼称。《続日本紀》の宝亀11年(780)3月辛巳条にこの語が見え,駕輿丁がその任務に従事することで庸調を免除されていたのが知られる。平安時代,927年(延長5)に成った《延喜式》によると,駕輿丁は〈四府(しふ)〉,すなわち左右近衛府と左右兵衛府とに直属し,前者では左右各100人,計200人が,また後者では左右各50人,計100人が従事した。…
…四府(左右近衛府,左右兵衛府)に属した駕輿丁が組織した商業の座の総称。米,酒,みそ,材木,引物,鍛冶炭,すき柄,白布,茜,錦,絹,呉服,紙折敷(おしき),薬,唐物,馬,古物,鳥,古鉄などの商品を扱った。…
※「駕輿丁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新