麁玉郡(読み)あらたまぐん

日本歴史地名大系 「麁玉郡」の解説

麁玉郡
あらたまぐん

遠江国の中央部西寄りに位置した古代から近世にかけての郡。

〔古代・中世〕

荒玉郡とも書く。郡域は天竜川西岸、現在の浜北市から天竜市にかけての地域に比定される。郡名は「和名抄」東急本国郡部に「阿良多末」の訓があり、「今有玉と称す」(原漢文)との注が付されている。藤原宮跡出土木簡(「藤原宮」―五五)に「荒玉評赤□里」とみえ、大宝令以前にすでに評として成立し、大宝令とともに郡となったことが知られる。郡としての所見は「万葉集」巻二〇に載る天平勝宝七歳(七五五)防人歌で、主帳丁の麁玉郡の若倭部身麻呂が「わが妻はいたく恋ひらし飲む水に影さへ見えて世に忘られず」と詠んでいる。なお同書巻一一に「あらたまの伎倍きへが竹垣編目ゆも妹し見えなばわれ恋ひめやも」、巻一四に「あらたまの伎倍の林に汝を立てて行きかつましじ眠を先立たね」などとみえる「あらたまの伎倍」は麁玉郡内の地名と考えられている。なお平城宮跡出土木簡(「平城宮木簡」五―六二一八)に「外大初上物部浄人年卅一 遠江国荒玉郡人(字カ)(年カ)遣高麗使叙位」との記載がある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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