黄色靱帯骨化症(読み)おうしょくじんたいこっかしょう

共同通信ニュース用語解説 「黄色靱帯骨化症」の解説

黄色靱帯骨化症

黄色靱帯じんたい骨化症 脊柱の黄色靱帯が肥厚して骨になり、脊髄神経を圧迫する病気。足などに痛みや障害が出る。原因は不明で、日本整形外科学会などによると日本人の発症が多い。ヘルニア症状が似ているため、診断が難しいとされる。

一般では男女差はなく、日本人の発症は50歳以降の中高年に偏る。2021年度に行政から医療費受給者証が交付されたのは6104人。野球投手では利き腕に関係なく、体の左側に症状が出たとの報告が多い。

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知恵蔵 「黄色靱帯骨化症」の解説

黄色靱帯骨化症

脊椎(せきつい)の靭帯(じんたい)のうち、脊髄の背中側にある黄色い靭帯が分厚くなり、骨のように硬くなって(骨化)、神経を圧迫し、手足脱力、しびれ、痛み、まひなどの症状が現れる病気。重症化すると歩行困難をきたす場合もある。脊髄の前側にある靭帯に骨化が発生する後縦(こうじゅう)靱帯骨化症と合併することが多く、この二つを合わせて「脊柱靭帯骨化症」と呼ばれている。日本国内の患者数は後縦靱帯骨化症の方が多い。
日本人は欧米人に比べて有病率が高いことが分かっているが、通常のX線画像には写りにくく読み取りにくいことから、正確な有病率は把握できていない。ただ、骨格標本の研究から、脊椎靭帯の骨化は成人の日本人のほとんどにあることが分かっており、無症状で気づかない人が非常に多いとみられる。
罹患(りかん)するのは20代以上。40代、50代に多く、男女差はあまりない。
黄色靭帯の骨化は、脊椎を構成する頸椎(けいつい)、胸椎、腰椎仙椎、尾椎のどこにでも発生するが、最も多いのは胸椎の下部である。胸椎下部の神経は下肢につながっていることから、その場合は足に症状が現れる。骨化の範囲は徐々に広がり、それにつれて症状も悪化するが、進行の速さは患者によってかなり差がある。
原因は不明で、根治療法はまだ見つかっていない。発症の初期には、鎮痛薬などを用いて痛みなどに対処しながら経過観察を行う。転倒などの強い衝撃が症状を悪化させるので、転ばないように注意しながら生活し、場合によっては安静を保つ必要がある。強い痛みや歩行困難により日常生活に支障がでてきたら、手術によって骨化した部分を切除することになる。ただし、切除しても骨化が収まるわけではなく、経過と共に再び骨化部位は増大する。また、何度も手術できる部位ではないため、神経の働きが可逆的に改善される見込みのあるうちに一度だけ切除して、最大の効果を上げるタイミングを図ることが重要とされている。
国の難病に指定されており、特定疾患治療研究事業の診断基準に当てはまる患者は治療費が公費負担となる。
東北楽天ゴールデンイーグルスの星野仙一監督は、2014年5月に黄色靭帯骨化症であることが分かり、休養に入った。

(石川れい子  ライター / 2014年)

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知恵蔵mini 「黄色靱帯骨化症」の解説

黄色靭帯骨化症

脊髄の後ろにある椎弓と呼ばれる部分を上下に結ぶ黄色靱帯が骨化し、脊髄を圧迫する疾患。下肢の脱力やしびれなどの症状が現れ、重症になると両下肢に麻痺が生じ、歩行困難になることもある。20歳以降で見られるが、40歳以降での発症が一般的である。X線検査やCTスキャン(コンピューター断層検査)、MRI(磁気共鳴撮像検査)などによって診断される。原因が明らかにされていないため、消炎鎮痛剤などを投与して慎重に経過が観察される。痛みが強い場合には硬膜外ブロック注射、症状に進行が見られる場合には手術が行われることもある。

(2013-10-18)

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