鼓膜器官(読み)こまくきかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼓膜器官」の意味・わかりやすい解説

鼓膜器官
こまくきかん

ある種の昆虫のもつ音受容器官。鼓状器官ともいう。昆虫によって、その形状とか位置に違いがある(キリギリスコオロギでは前肢バッタでは第1腹節、セミでは第2腹節、ガでは胸部あるいは腹部にある)が、基本的には、微弱な空気の振動にも共振する鼓膜と、この鼓膜の振動を感じ取り電気信号に変え中枢に送り出す弦音器官の一群から成り立っている。鼓膜は表皮の薄くなったもので、鼓膜器官の一部をなす気管の膨張部分に張られている。弦音器官は神経細胞とこれを支える数個の細胞からなる。神経細胞は、その先端の細い突起(軸糸)を鼓膜あるいは鼓膜に近い表皮に付着させて、それらの振動に伴って生ずる軸糸の伸び、ずれなどを感じ取る仕組みになっている。しかし、音受容器としての弦音器官の集合体は、音の高低は区別できず、一定の振動数の音しか感じ取れない。鼓膜器官のような構造化された音受容器をもたない昆虫や幼虫では、体の表面に散在する個々の弦音器官が音受容器官として働く。

[竹内重夫]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の鼓膜器官の言及

【弦音器官】より

…昆虫の機械受容器の一種で,体壁下にあって先端を体壁の一部に,求心側を他の部分に付着させ,弦のように張りめぐらされた感覚子が集まったものを弦音器官という。弦音器官には昆虫特有の聴覚器官である鼓膜器官tympanal organも含まれる。鼓膜器官以外には,比較的少数の感覚子からなる弦音器官が触角や足などの体の関節近くにあり自己受容器として働くが,羽の動きを受容するものもある。…

【聴覚】より

…昆虫のうち,直翅(ちよくし)類のキリギリス,コオロギ,バッタやセミ類のように発音する昆虫では,同種個体間の交信に聴覚が用いられるが,ヤガやカゲロウなどでは,コウモリから逃れるためにコウモリの出す音を聞き分けている。これらの昆虫にはよく発達した聴覚器官である鼓膜器官tympanic organがある。鼓膜器官はキリギリスやコオロギでは前肢脛節(けいせつ)に,バッタやセミでは腹部に,ヤガでは胸部に,そしてカゲロウでは羽にそれぞれ存在する。…

※「鼓膜器官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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