スクラム・ジェット・エンジン(読み)すくらむじぇっとえんじん

知恵蔵 の解説

スクラム・ジェット・エンジン

大陸間極超音速飛行用として、大気圏内をマッハ6〜12の速度で効率よく飛ぶために研究されているエンジン。スペースシャトルの後継機のエンジンとしても開発が進む。極超音速の飛行体では、外気流を取り入れてダクト内で減速すれば、大きな押し込み圧力(ラム圧)で空気が圧縮される。そこで燃料燃焼させ、後方に加速されたガスとして噴出させれば、圧縮器を使わない簡潔なジェット(ラム・ジェット)になる。燃焼に必要な酸素に大気の成分を利用するので、液体水素/酸素ロケットに比べ、飛行体を遥かに軽量、コンパクト化できる。しかし燃焼が安定する亜音速まで減速すると高温になり過ぎてしまうので減速を超音速流までにとどめるのがスクラム・ジェット。超音速流の中での安定した燃焼が課題。米航空宇宙局(NASA)のX‐43A実験機は2004年11月16日にマッハ9.8を記録した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でも研究が行われている。

(鳥養鶴雄 元日本航空機開発協会常務理事 技術士(航空機部門) / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

世界大百科事典(旧版)内のスクラム・ジェット・エンジンの言及

【HST】より

…機体はアスペクト比の小さい三角翼機が有利とされ,高速では機体下面の空気の圧力上昇で揚力を得る形式になる。エンジンもM3~4以上になると,機の進行速度で空気をせき止めるだけで作動に十分な圧縮ができるので,圧縮機やタービンのないラムジェットエンジンまたはスクラムジェットエンジン(超音速気流中で燃焼を行うラムジェットエンジン)が使われる。ただしこれらのエンジンは低速では作動しないので,離着陸用にはふつうのジェットエンジンが必要となる。…

※「スクラム・ジェット・エンジン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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