水素を液体にしたもの。イギリスのデュワーは25気圧に圧縮された水素ガスを液体空気で零下約180℃に冷却し、この気体を熱交換器を通してジュール‐トムソン効果によって膨張させ、液化させることに初めて成功した。この1898年のデュワーによる水素液化の成功はあまり広くは知られていない。それは水素ガスが爆発性の危険な気体であるのと同様に、液体水素もまた酸素と共存すると、きわめて危険な爆発物となるためと推測される。しかし、このデュワーの成果は、1908年にオランダのカマーリン・オネスが最後の永久気体といわれたヘリウムガスの液化に成功するうえで、欠くことのできないものであった。
液体水素は無色の液体で、沸点零下252.7℃(絶対温度では20.4K)、融点零下259.2℃(14.0K)。液体酸素と接触させると激しく燃焼し、その火炎の中心温度は3500℃にも達する。この燃焼を利用してアポロ計画など大型宇宙ロケットの推力として用いられた。また、この燃焼効率のよさ、燃焼ガスが低公害であることにより、航空機、自動車の石油燃料にかわる燃料として、さらに水素を使った燃料電池の実用化に向けて開発が進められている。ほかに低温研究用冷媒、宇宙線、高エネルギー研究のための液体水素泡箱などに使用される。液体水素の取扱いは、その引火爆発性のため細心の注意を必要とする。
[渡辺 昂]
『奥田毅著『低温小史――超伝導へのみち』(1992・内田老鶴圃)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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