NASA(読み)ナサ

デジタル大辞泉 「NASA」の意味・読み・例文・類語

ナサ【NASA】[National Aeronautics and Space Administration]

National Aeronautics and Space Administration》米国航空宇宙局。1958年に設立された政府機関。アポロ計画スペースシャトル計画などを達成し、国際宇宙ステーションの開発にも参画している。ワシントン特別区に本部があるほか、各地にジョンソン宇宙センターケネディ宇宙センターなどの施設をもつ。

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精選版 日本国語大辞典 「NASA」の意味・読み・例文・類語

ナサ【NASA】

  1. ( [英語] National Aeronautics and Space Administration の略 ) アメリカ航空宇宙局アメリカ宇宙開発の政府機関。一九五八年に設立され、各省と並んで大統領の直属機関となっている。非軍事的な宇宙開発を目的とし、活動の中心は有人宇宙飛行。

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改訂新版 世界大百科事典 「NASA」の意味・わかりやすい解説

NASA (ナサ)

National Aeronautics and Space Administrationの略。アメリカの政府機関の一つで,アメリカ航空宇宙局,あるいは単に航空宇宙局と訳されることが多い。組織的には大統領に直接指導される独立した官庁である。NASAは1958年10月1日,宇宙の探査とそのための技術開発を軍の活動と切り離して高い理念の下に実施したいというアイゼンハワー大統領の意向により,それまで主として航空工学の研究を指導してきたNACA(ナカ)(National Advisory Committee on Aeronauticsの略。航空諮問委員会)の組織と機能を強化する形で発足した。その当時は前年の1957年にソ連(現ロシア)が世界初の人工衛星スプートニクを打ち上げ,一方,アメリカ国内では陸・海・空軍がミサイル開発競争にしのぎをけずっており,それが宇宙進出の主導権争いの様相を呈してきたため,宇宙計画を統合的に実行する機関の必要性が痛感されるようになってきた。それは人工衛星だけではなく,有人飛行計画とより大規模な宇宙探査計画を創造的に発展させる能力をもたねばならないと考えられた。またアイゼンハワーは産軍癒着の体質をきらい,それまで軍が中心となって計画を立て技術開発を行ってきた活動を純然たる文民組織の下に行うことを強く希望したといわれている。その結果,アメリカの宇宙活動が人類の平和に貢献することを規定した〈1958年国家航空宇宙法〉によってNASAの設置が決定され,NASAは国防省の担当する武器になるようなシステム以外のものすべてに責任をもつことになった。具体的にいうと,(1)大気圏と宇宙についての知識を増やすこと,(2)航空と宇宙での飛行体の性能を向上させること,(3)人間の乗る宇宙の乗物を開発し運用すること,(4)航空・宇宙の知識から得られる恩恵を長期にわたって研究すること,(5)航空と宇宙科学,その平和的利用において世界の指導的地位に立つこと,(6)新しい知識を他の機関に提供すること,(7)外国との協力を進めること,(8)国内での人材資材を有効に利用することである。このようにしてNASAは高度な科学と技術を追求し,これをプロジェクトとして実現するためのエンジニアリング能力を保有することが保証されたきわめてユニークな官庁となった。とくにその前身であったNACAが1915年設立以来一貫して技術に関する諮問機関であったのと対照的に,みずから大きな国家プロジェクトを実行する権限が与えられたことが特徴である。

 NASAの活動を支える主力は,比較的独立性の強いセンターと呼ばれる施設である。NACAは20年にバージニア州にラングレー研究センターを開設し,さらに39年カリフォルニア州にエームズ研究センター,40年オハイオ州にルイス研究センターを設立したが,これらの研究センターはNASAに引きつがれてもっぱら研究に重点をおいた活動をしている。NASAが発足してからは,58年メリーランド州にスペースセンターが発足,これは翌59年アメリカのロケットの先駆者R.ゴダードの名を冠してゴダード宇宙飛行センターと呼ばれるようになり,無人衛星計画と宇宙船追跡などの業務を主として実施することになった。60年にアラバマ州の陸軍ミサイルセンターがNASAに移管されてマーシャル宇宙飛行センターとなり,このセンターはW.vonブラウンに率いられ,有人飛行技術の開発を担当,長い間NASA最大のセンターであった。フロリダ州ケープ・カナベラルのロケット発射場も初めはこれに所属していたが,62年に独立したセンターとなり,翌年暗殺されたケネディ大統領の名をとってケネディ宇宙センターと呼ばれるようになった。以後,ロケットの発射業務を担当,アメリカの宇宙港といわれている。国立宇宙技術研究所もかつてマーシャル宇宙飛行センターの一部であったが,74年に独立の組織となり,政府各省が地球観測データをはじめ宇宙技術の成果を利用する研究所となっている。有人宇宙飛行ではもっとも有名なテキサスのジョンソン宇宙センターは1961年に開設,宇宙船と人間の宇宙飛行に必要な技術を開発するほか,有人飛行の管制センターとなっている。これらのセンターに比べるとやや規模の小さいものとして,ドライデン飛行研究施設,ワロップス飛行施設,ホワイトサンズ試験施設などがある。またNASAの組織ではないが,NASAのために委託をうけて活動しているのがカリフォルニア工科大学のジェット推進研究所である。この研究所の起源は古く,1936年にT.vonカルマンが創立したグッゲンハイム航空研究所がその前身である。

 NASAは発足当初から大型の宇宙プロジェクトを実行してきた。その中にはアメリカ初の有人飛行計画であるマーキュリー計画,次いでジェミニ計画,69年に月に人間を送り込んだアポロ計画および同じ器材を利用したアメリカ初の宇宙ステーションといわれるスカイラブ計画,そしてスペースシャトル計画などの有人宇宙飛行計画が含まれる。無人探査の分野では,パイオニアマリナーシリーズによる太陽系のほとんどすべての惑星の探査,火星の生命を調査したバイキング計画,そして木星と土星を詳しく調べたボエジャー計画など,人類の知識の最前線を拡大した。また,これらの技術は通信衛星や地球観測,気象衛星などに応用され,NASA以外にも利用されており,研究開発の終了した衛星は,そのための打上げロケットとともに,民間企業へ順次委譲されつつある。前出の法令にも定められているとおり,国際協力はNASAのユニークな一面である。これまで大小さまざまの国際協力を実施してきたが,旧ソ連とのアポロ・ソユーズ共同飛行,ヨーロッパ諸国で組織するESA(イーザ)とのスペースラブ計画などはとくに大規模な代表的な例である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「NASA」の意味・わかりやすい解説

NASA
なさ

アメリカ航空宇宙局National Aeronautics and Space Administrationの略称。非軍事目的の宇宙開発および先進的な航空技術の研究開発を担う連邦政府組織である。首都ワシントンにあるNASA本部と、ジョンソン宇宙センター、ゴダード宇宙飛行センターなど全米各地に存在するセンターからなる。全体の定員は1万8000名程度、予算は200億ドル程度で、省レベルの組織ではないが大統領直属の独立機関である。航空諮問委員会(NACA、1915年創設)を母体として、1958年にアメリカ航空宇宙法によって設立された。

[佐藤 靖 2017年2月16日]

有人宇宙計画

NASAは設立後すぐに陸海空軍から組織や人材の移管を受け、急速に陣容を拡大し、高度な技術力を獲得した。当時のアメリカには宇宙開発分野でソ連に先を越されているという危機感があり、議会もNASAを積極的に支援した。1961年には、ケネディ大統領(当時)がアポロ計画の実施を決断し、1960年代末までに有人月面着陸を実現すると宣言する。NASAは総力をあげて同計画に取り組み、1969年7月20日、ニール・アームストロング船長率いるアポロ11号宇宙船が月面着陸を達成した。

 アポロ計画が成功した後は、米ソ間の冷戦の緊張がやや緩んだこともあり、宇宙開発に対する議会の支持は弱まったが、NASAは宇宙往還機スペースシャトルの開発を開始し、1981年にその初号機打上げに成功する。ただし、1986年には打上げ73秒後に機体が空中分解して宇宙飛行士7名全員が犠牲になるというチャレンジャー号事故が起き、アメリカ社会に衝撃を与えた。

 1998年以降、スペースシャトルは国際宇宙ステーション(ISS)の部材の地球軌道上への運搬を始めた。国際宇宙ステーションとは、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、日本、カナダなどの国際協力による、人間が地球軌道上に長期滞在するための巨大構築物である。その組立ては、2003年のスペースシャトル・コロンビア号の事故などもあって遅延したが、2011年に完成する。一方、同年アメリカではスペースシャトルが退役し、その結果、国際宇宙ステーションへの人員の輸送はロシアのソユーズ宇宙船が担うことになった。

[佐藤 靖 2017年2月16日]

無人宇宙計画

NASAは設立以来、有人宇宙計画に加え、無人宇宙探査も着実に進めてきた。有名な計画としては、1976年に火星軟着陸を成し遂げたバイキング計画、1980年代に木星・土星・天王星・海王星すべての近傍を通過して観測を行ったボイジャー計画、1995年から木星およびその衛星の接近観測を行ったガリレオ計画、2004年から土星およびその衛星の接近観測を行ったカッシーニ計画などがあげられる。また、NASAはこれまで、地球観測を行うための衛星や、天文観測を行うための観測機器や巨大望遠鏡を地球軌道上に打ち上げてきた。1990年に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡は、長期間にわたって宇宙科学に大きな影響を与える発見を数多くもたらしてきた。

 NASAにおける無人宇宙計画の重要性は近年高まってきている。1990年代以降、冷戦構造の崩壊、グローバル化の進展により、宇宙開発における国威発揚の側面が弱まり、かわりに科学探査の側面が重視されるようになってきたためである。また、有人宇宙計画の次のステップとして考えられる有人火星探査が、資金面・技術面であまりにハードルが高いためになかなか進展しないことも原因である。一方、無人宇宙計画の分野では、NASAは近年も存在感を示し、人々をひきつける成果を出してきたといえる。

[佐藤 靖 2017年2月16日]


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百科事典マイペディア 「NASA」の意味・わかりやすい解説

NASA【ナサ】

National Aeronautics and Space Administrationの略。ふつうアメリカ航空宇宙局と訳される。アポロ計画はじめ,惑星探査計画,スペースシャトル計画など米国の軍事用を除く宇宙計画の総推進機関。1958年航空工学の研究を主導してきたNACA(ナカ)(National Advisory Committee on Aeronauticsの略。アメリカ航空諮問委員会)を強化する形で設立。本部ワシントン。ケネディ宇宙センター,マーシャル宇宙飛行センター,有人宇宙飛行センターなどの諸施設および複雑巨大な研究開発機構をもつ。
→関連項目アポロ計画エドワーズ基地ケープ・カナベラル磁性流体ハッブル宇宙望遠鏡ヒューストンブラウンボエジャーマーキュリー計画マリナー計画

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「NASA」の意味・わかりやすい解説

NASA
ナサ

「アメリカ航空宇宙局」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のNASAの言及

【宇宙開発】より

…さらに改善された通信衛星はこれを静止衛星軌道にのせて,つねに地上との位置関係を同じに保ち,あたかも地球上の上空に固定した中継局のように利用するものである。NASA(ナサ)のシンコム3号(1964)がこの種の衛星の先駆けとなり,現在ではインテルサットという国際組織による同名の通信衛星の運用が行われ,国際通信の一端を担っている。このほか,ロシアは高緯度の領土に適した楕円軌道のモルニア型衛星を用いて国内通信に供している。…

※「NASA」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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