日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
トムソン(George Thomson)
とむそん
George Thomson
(1903―1987)
イギリスの著名な古典学者、古代史家。初期の著作にはギリシアの叙情詩論や悲劇の校訂などがあるが、1941年『アイスキュロスとアテナイ』Aeschylus and Athensを公刊し一躍古代史家として注目を浴びた。この著は、史的唯物論を古代ギリシア史に適用した最初の試みといえるもので、アイスキロスの悲劇のマルクス主義的解明を通して、原始社会からアテネの民主政の成立、展開が社会史的に探られている。同じ方法論にたって、49年には『ギリシア古代社会研究』Studies in ancient Greek societyという大著を公にし、その問題の深化を図っている。なお、彼はイギリス、アイルランドの詩にも造詣(ぞうけい)が深く、その学識を駆使して小論ながら詩の起源とその発展を論じた優れたマルクス主義詩論『詩とマルキシズム』Marxism and poetry(1946)もある。
[古川堅治]
『池田薫訳『ギリシア古代社会研究』上下(1954、55・岩波書店)』▽『出隆・池田薫訳『最初の哲学者たち』(1958・岩波書店)』▽『小笠原豊樹訳『詩とマルキシズム』(1972・れんが書房)』