化学辞典 第2版 「BINAP」の解説
BINAP(バイナップ)
バイナップ
2,2′-bis(diphenylphos-phino)-1,1′-binaphthyl.C44H32P2(622.94).バイナップともいう.1,1′-ビナフタレン-2,2′-ジオールのヒドロキシ基を(C6H5)3PBr2で臭素にかえ,ブチルリチウムでリチオ化後(C6H5)2PClと反応させると得られる.光学分割した(R)-BINAPは融点240~241 ℃.+229°(ベンゼン).(S)-BINAPは融点241~242 ℃.-229°(ベンゼン).これらのRh,Pd,Ru錯体(配位子は2 mol のカルボン酸ほか),とくにRu錯体は種々のオレフィン,ケトン,β-ケトカルボン酸などを高い立体選択性(ee 92~100%)で不斉還元するのに用いられる.さらに,bis-BINAP・Ru+ 錯体はアリル水素の不斉移動を微量(1/8000 mol)で接触し,たとえばN,N-ジエチルゲラニルアミンやN,N-ジエチルネリルアミンを光学活性なエナミン形(図)に異性化させる.この反応は,l-メントールの合成に有効で,2000 t/年単位で工業的に実施されている.[CAS 98327-87-8]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報