改訂新版 世界大百科事典 「COS」の意味・わかりやすい解説
COS (シーオーエス)
charity organization society(movement)(慈善組織協会(運動))の略。19世紀後半,イギリスでは資本主義の発展に伴って貧困,無知,犯罪,疾病などに関する社会問題が急速に深刻化し,救貧制度改革の動きとともに,私的救済事業も活発になった。これら慈善救済を無差別に行うことによる乱救・重複を防止することを目的として,ロンドンはじめ各都市に慈善組織協会が結成されたが,これらの動きと協会の活動とを総称してCOSといっている。この運動は欧米各国や日本にも大きな影響を及ぼし,それぞれの国で近代社会事業成立期には同様な動きがあった。COSは慈善から近代社会事業の成立に至る過程で歴史的必然性をもって起こった社会改良運動の一つといえる。慈善組織協会の主たる活動は,地区委員による貧困家庭の救済活動と慈善団体施設の連絡で,前者の個別処遇の実践から近代社会事業のケースワーク(ケースワーカー)が発達し,後者は地域組織化活動の先駆的動きとして知られている。
執筆者:永田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報