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資本主義 しほんしゅぎcapitalism

翻訳|capitalism

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

資本主義
しほんしゅぎ
capitalism

封建制以後に支配的になった生産様式。蓄積された富や貨幣という素朴な意味での資本は,古代から存在する。だが資本主義とは,労働力を商品化し,剰余労働を剰余価値とすることによって資本の自己増殖を目指し,資本蓄積を最上位におく社会システムに限定すべきである。歴史的には資本主義はすべてのものを商品化する傾向をもつ市場システムとして現れたが,他方,蓄積を強力に推進する近代諸国家とそれらが競合する世界システムとしても現れた。ごく局地的な市場は古代より存在したが,労働力をも商品化する資本主義的市場は 15世紀末ヨーロッパで誕生した。 14~15世紀のヨーロッパ封建制は,支配層が大規模な相互破壊を繰返し,社会的基盤の土地制度も弛緩し,深刻な危機に瀕していた。イギリスでは 16世紀以降始った農業革命が,マニュファクチュア時代を通じて 18世紀にいたるまで本源的蓄積を推し進め,人口増大 (1500~1640および 1750以降) を伴いつつ囲い込みを通じて労働力供給を実現し,旧地主層のなしくずし的ブルジョア化をもたらした。他方,資本主義においてはその出発点から,多少とも重要な商品連鎖はほとんど国境を越えて展開されていた。 16世紀以降,国際市場内で優勢な中核地域に周辺から資本が集中していった結果,農業革命と相まって強力な国家機構を構築するための財政基盤が整ったばかりか,それを目指す政治的動機も生じ,重商主義をもたらした。これは国内の幼稚産業の保護を重視し,国内市場の大きな発達をみた反面,国内外の労働特化を低賃金で強要し,自国の優位をねらった各種経済規制を設ける構造を内包していた。蓄積と市場との重商主義的緊張関係は,18世紀に A.スミスが自由市場こそが蓄積にかなうことを示したことで理念的にはさしあたり決着がつけられ,18世紀後半からのイギリス産業革命の進行とともに,自由主義的国家,自由貿易,自己調整的市場,国際金本位制などに象徴される古典的資本主義が 19世紀に確立した。だが 19世紀末にドイツ,アメリカらがイギリスを脅かしはじめるにつれ,古典的資本主義は変質していき,第1,2次両世界大戦間に,失業や大恐慌,金本位制の崩壊や貿易障壁,帝国主義や民族主義,植民地の抵抗などを通じて市場と蓄積体制とに対する調和的理念は疑わしいものとなり,社会主義的政治体制も生れることになる。第2次世界大戦後の管理通貨制度や有効需要政策と結びついた混合経済の出現は,市場と蓄積体制との新たな緊張関係を再び示し,20世紀末の社会主義体制の相次ぐ崩壊を迎えて,資本主義は蓄積体制の新たな再編を迫られている。

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デジタル大辞泉の解説

しほん‐しゅぎ【資本主義】

封建制度に次いで現れ、産業革命によって確立された経済体制生産手段を資本として私有する資本家が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者から労働力を商品として買い、それを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造。生産活動は利潤追求を原動力とする市場メカニズムによって運営される。キャピタリズム

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百科事典マイペディアの解説

資本主義【しほんしゅぎ】

英語ではcapitalism。生産手段を私有する資本家が,生産手段をもたない労働者の労働力を商品として買い取って商品生産を行う生産様式。この生産過程剰余価値が生み出され,資本家はこれを利潤として獲得する。
→関連項目階級階級闘争共産党資本論プロレタリアート

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世界大百科事典 第2版の解説

しほんしゅぎ【資本主義 capitalism】

資本主義という言葉は,社会主義とか封建制とかの言葉と同じように,一つの社会,国家における経済のしくみ,すなわち経済体制(経済システム)の特徴をいいあらわす言葉である。旧ソ連の経済とアメリカの経済は,同じように高度に工業化した経済であるが,経済取引の方法や企業と政府の関係などは大きく異なっていた。前者はふつう社会主義の経済とよばれ,後者は資本主義の経済とよばれて区別される(〈社会主義〉の項目の[社会主義経済]を参照)。

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大辞林 第三版の解説

しほんしゅぎ【資本主義】

商品経済の広範な発達を前提に、労働者を雇い入れた資本家による利潤の追求を原動力として動く経済体制。資本家が生産手段を私有し、労働力以外に売る物をもたぬ労働者の労働力を商品として買い、労賃部分を上回る価値をもつ商品を生産して利潤を得る経済。封建制に次ぎ現れた経済体制で、産業革命によって確立された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

資本主義
しほんしゅぎ
capitalism英語
Kapitalismusドイツ語
capitalismeフランス語

生産のための組織が資本によってつくられている経済体制。すなわち、資本制企業が物財やサービスの生産・流通の主体になっている経済体制であり、資本制経済ともよぶ。日本、アメリカ合衆国、西ヨーロッパ諸国など、いわゆる「西側の先進国」の経済体制は、資本主義である。[岸本重陳・植村博恭]

経済体制としての資本主義

資本主義という用語は、資本が生産活動の主体となっている経済体制・経済システムをさすもので、主義・主張・思想をさすわけではない。アルコホリズムalcoholismということばがアルコール主義ではなくてアルコール中毒という状態を示すものであるのと同様に、資本制経済という体制を意味することばである。この経済体制を肯定したり擁護したり推進したりする思想・主張をさすためには、「自由主義」という用語が使われるのが普通である。資本による企業設立の自由、その企業による営業活動の自由を主張する自由主義の立場からは、資本主義という用語を忌避して、「自由経済」とよぶことが少なくない。
 資本主義の構造と動態の解明のうえでもっとも大きな影響力を及ぼしてきた理論はカール・マルクスの理論であるが、その主著『資本論』においてマルクスは、資本主義ということばは使わず、「資本家的(もしくは資本主義的、あるいは資本制的)生産様式kapitalistische Produktionsweise」という表現を用いている。マルクスの考えでは、資本主義は、人類が歴史的に経験してきたさまざまな生産様式の一つであり、また永遠に存続していく最後の生産様式であるわけではない。歴史のなかで新しく誕生しやがて歴史のなかに消えていく一つの生産様式(経済体制)という性格を強調するためには、資本主義とよぶよりも「資本家的生産様式」という用語のほうがふさわしいと思われたのだろう。[岸本重陳・植村博恭]

資本主義の基本構造


経済体制の編成原理
生存のためには生産が不可欠である。その生産のためには、労働をしなければならない。労働をする人間の肉体と精神の力である労働力、その労働が向けられる自然や素材などの対象、すなわち労働対象、そして労働をするときに人間が使う道具や機械、すなわち人間の肉体と精神の力の拡充・延長・外在化である労働手段、この三者が結び付いて生産が行われる。
 労働対象と労働手段とをあわせて生産手段とよぶが、その生産手段の所有者が社会のなかの特定の人々だけに限られているのが階級社会である。階級社会では、労働する者は生産手段を所有せず、その意味で両者は分離しているので、なんらかの仕方でこの両者を結合させなければ生産が行えない。その分離の仕方と結合の仕方とが、経済体制の違いをつくりだす。奴隷制では、労働する人間は生産手段所有者の所有物である。この場合には、生産手段所有者にとって両者は分離しておらず、初めから結合している。農奴制もしくは地主制では、労働する人はもはや生産手段所有者の所有物ではなくなっているけれども、身分的隷属と移動の自由の制限によって、生産手段に緊縛されている。これらに対し、いわゆる封建的制約を打破し、個人の自由を価値原理として世界史の近代が始まるなかで成立する資本制は、労働力は個々人の肉体と精神のうちに実存するものであり、個々人の所有するものであることを承認した経済体制である。生産手段所有に対して労働力所有が初めて自立化した体制である。労働力の自己所有を承認された人間が労働者であり、奴隷や農奴は労働者ではない。[岸本重陳・植村博恭]
労働力の商品化と資本化
労働者が生存のために必要な物を手に入れるには労働しなければならない。しかし彼らには生産手段がないのだから、生産手段所有者に労働力を提供しなければならない。生産手段所有者のほうも、労働力を入手しなければ生産を行うことができない。両者の結合は、労働力を商品として売買することによって行われる。なぜ商品になるかといえば、自分の所有物を自分の意思で対価と引き換えに提供しあうのだからである。労働力は「賃金」という対価と引き換えに資本によって買われ、資本の力能となる。商品化した労働力は、買い手が資本である限り、資本化する。労働者は、自分の労働をするのではなく、資本の命ずるところを、資本の力を構成する要素として、労働する。資本の所有単位である企業は、このようにして労働力を自分の力として掌握し、生産手段と結合させて生産を行う。しかし、労働力は人間の肉体と精神のうちに実存するものである以上、その支出の仕方は、人間の意思から切り離しえない。その意味で、労働力という商品は、資本の側からすれば、形式的には買うことができるが、実質的には「買い切れない」要素をもつ商品である。資本制企業にとって労務管理の問題が最重要の課題になるのはそのためである。
 どんな経済体制でも、生産活動をするためには人間は共同して労働する。したがって共同労働の組織化が必要となる。以上の特質は、共同労働の組織化という面での資本主義の特質にほかならない。[岸本重陳・植村博恭]
市場メカニズムと資本主義
次に、生産された物がどのようにして人々の間に分配されるかという面からも、資本主義という経済体制の特質をみることができる。この面からの特徴として指摘できるのは、商品売買を通じて分配が行われるということである。
 人々の間での分配というとき、二つの側面がある。一つは、生産活動に携わったことによって生活資料を獲得できるようにする対人分配であり、もう一つは、その生産活動を継続していくために必要な条件を満たすという機能的分配である。そのどちらも、究極的には商品売買、したがって市場メカニズムを通じて行われるというのが、資本主義の特質である。まず第一に、個々の資本制企業は、何をどれだけどのように生産するかを自分の意思で決定することができる。第二に、それらの生産物は、不特定多数の人々に、対価と引き換えに提供するつもりで供給される。すなわち商品として生産され、商品として供給される。しかし、生産したものが、予定した価格で確実に売れるという保証はない。それは、買い手の選択と評価にさらされる。このように、作り手が不特定多数の相手の需要を想定しながら生産し、生産されたものを自分の意思で選択できる関係を市場関係といい、市場関係で需要と供給を一致させるように作用するメカニズムを市場メカニズムという。
 労働者個々人に対してどれだけの賃金を支払うかということも、もちろん分配問題であり、それは資本が決定する。しかし、労働者が手に入れたその賃金で何をどれだけ買うかということが、対人分配を完結させる。そしてまた、資本制企業は、社会的分業の下、生産の継続に必要な労働力や生産財を市場で買わなければならない。そうした生産要素の補充ができるかどうかが、機能的分配という問題である。資本制企業は、互いに相手の生産した商品を買い合ってそのような補充を行うわけだが、それらを買うためには、自分の生産した商品が売れて所要の資金が手に入るのでなければならない。その意味で機能的分配も市場を通じて行われる。しかし、市場で需給が一致する保証はない。価格の変動や供給量の調節によってその需給一致が図られるのが市場メカニズムである。しかし、たとえば、価格上昇によって市場での需給が一致するようになったというときには、実は価格が高くなると買えなくなってしまう人を排除したから需給が一致できたのだと解釈することができる。
 市場メカニズムは、人々の選択・選好に応じた資源配分を実現できるものだと評価し、この市場メカニズムに適合する生産様式は資本主義であると考えて資本主義を擁護する立場があるが、市場メカニズムはお金による投票で事を決めていくシステムなのだから、お金の分配が公平でなければ、その投票結果も人々のニーズや選好を純粋に反映したものとはいえないだろう。また、資本主義を否定するためには市場メカニズムを否定しなければならないとする考え方も、資本主義と市場メカニズムとを同一視する点で、同じ誤りに陥っている。むしろ、資本主義という経済体制と市場関係およびそのメカニズムとがどのような構造的連関をもっているか、ということこそが問われるべきであり、この点に関しては、「社会主義」を名のる体制が登場して以降、「社会主義における市場」の問題というかたちでも議論されてきた。[岸本重陳・植村博恭]

資本主義の成立・発展と展望

資本主義という経済体制は、人々がそういうものをつくろうと意図的に努力してつくったものではない。たとえば、フランス大革命のスローガン「自由・平等・博愛」は近代を切り開いたスローガンであるが、資本主義は、営利の自由と餓死する自由をつくりだしたけれども、平等と博愛とを実現しえていない。マックス・ウェーバーは、これとは異なる脈絡のなかでだが、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』において、資本主義は「意図せざる結果」として生み落とされたと主張している。しかしともあれ、近代に至って人々が相互に承認しあった個人の自由は、経済活動に大きな生産力の拡大をもたらし、それを営利の自由として取り込んだ資本主義は、かつてない生産技術の展開を工場制工業として実現し、物的生産の大々的拡大によって生活を変革してきた。その間、厳しい労資の階級間対立があり、恐慌があり、失業があり、帝国主義戦争があったが、経済体制としての資本主義は、「西側自由主義国」の内部では第二次世界大戦後、かえって「意図的に望ましいとされるもの」になっている。イデオロギーとしての資本主義は強化されたともいえる状況にある。
 そうなったについては、なによりも資本主義が内包する柔構造的性格が大きく作用している。賃金は資本にとってはコストだから、資本はこれをできるだけ押さえ込みたい。しかし、労働者は、資本の生産物のうち消費財にとっては最大の買い手である。労働者の消費の源泉となる賃金所得は、資本にとって需要の源泉としての性格をもっているから、これをあまりに低く抑えすぎることは自縄自縛となる。その限りで、資本主義のもとで、労働者の生活の向上が可能となる。資本制企業はまた資本金拡大のために株式会社の形態をとるようになる。労働者階級もまた株を買い、出資者としての利益配分にあずかるルートができる。前者は資本主義が市場関係に依拠しているがゆえの柔構造だし、後者は資本による労働の組織化に内包されている柔構造とみることができる。こうした柔構造による成果配分が、労働疎外のような否定面をカバーするだけの魅力と受け取られる限り、資本主義は、経済体制としての安定性を確保することができよう。しかし、市場におけるお金の民主主義が問い直され、「民主主義は工場の門前に立ちすくむ」といわれるような企業内での専制主義が問い直されるようになれば、資本による経済の組織化体制としての資本主義は、揺らぎださざるをえないだろう。[岸本重陳・植村博恭]
『J・A・シュムペーター著、中山伊知郎・東畑精一訳『資本主義・社会主義・民主主義』全3巻(1951~52・東洋経済新報社) ▽S・マーグリン、J・ショアー編著、磯谷明徳・植村博恭・海老塚明監訳『資本主義の黄金時代』(1993・東洋経済新報社) ▽日本経済新聞社編・刊『資本主義の未来を問う――変貌する市場・企業・政府の関係』(2005) ▽K・マルクス著『資本論』(向坂逸郎訳・岩波文庫/岡崎次郎訳・大月書店・国民文庫) ▽M・ウェーバー著、梶山力・大塚久雄訳『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫) ▽R.L.Heilbroner The Nature and Logic of Capitalism(1985, W. W. Norton & Company, New York, London)』

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世界大百科事典内の資本主義の言及

【農民層分解】より

…自立した小経営農民が,商品経済の進展の下で土地・生産手段を失って没落する多数者と,逆に土地・生産手段を集積して富裕化する少数者とに分極していく過程をいう。この過程は封建末期に始まり資本主義の全期を通じて続いている。自立農民が分解していくのは,商品経済に巻き込まれることによって,経営間の生産力の格差(価値形成の差)や生産物販売の差異(価値実現の差)によって,貧窮化する者と富裕化する者が生ずるためである。…

※「資本主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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