日本大百科全書(ニッポニカ) 「CANDU炉」の意味・わかりやすい解説
CANDU炉
きゃんどぅーろ
カナダで開発された天然ウラン重水減速型の発電用原子炉のこと。カナダは、当初から天然ウランを用いた重水炉の研究・開発を進め、1968年に最初のCANDU炉であるダグラスポイント発電所が運転を始めた。その後、出力増大のために改良され、73年までに電気出力50万キロワットの原子炉4基をもつピッカリング発電所が最初の商業炉として営業運転を始めた。最近では、ピッカリング(8基)、ブルース(8基)、ダーリントン(4基)などの各原子力発電所が操業している。この炉は、天然ウラン酸化物燃料にジルカロイの被覆をした燃料棒を束にして燃料集合体をつくり、横向きの円筒型圧力容器に入れ、重水を減速材と冷却材に兼用する。軽水炉と同様に冷却材を90気圧程度に加圧し循環させ、冷却系に蒸気発生器をもつ加圧型(CANDU‐PHR)と、冷却材の軽水から発生した蒸気を直接タービンに送る沸騰型(CANDU‐BLW)の2種類が開発されたが、沸騰型で現在稼動している炉はない。世界で最高の稼動率を誇る炉であるが、カナダ国内では発電設備が過剰で、発注が見込めないため、アルゼンチン、韓国など海外への輸出を積極的に進めている。カナダでは、CANDU炉の使用済み燃料は再処理しない方針であり、すでに90万本ほどの燃料が保管されているが、その最終処分場開設のための研究開発が進められている。
[青柳長紀]