ジルコニウムZrの合金。ZrのほかにSn 1.5%,Fe 0.12%,Ni 0.05%,Cr 0.1%のジルカロイ-2と,Sn 1.5%,Fe 0.2%,Cr 0.1%のジルカロイ-4の2種の実用合金がある(以上重量%)。発電用原子炉の沸騰水型炉は燃料被覆管にジルカロイ-2,燃料集合体にかぶせるチャンネル・ボックスにジルカロイ-4を使用している。加圧水型炉では燃料被覆管にジルカロイ-4を使用している。この合金は熱中性子の吸収が小さいことが特徴で,さらに,高温水に対する耐食性がよいこと,適度の強さと延性をもち,加工性もよいことから,上記のように熱中性子を利用する原子炉の炉心部で使用されている。その歴史はアメリカが原子力潜水艦の炉心材料として開発したのにはじまる。ジルカロイ-2とジルカイロ-4の性質はきわめて似ているが,高温水で腐食されたとき発生する水素の合金への吸収割合はジルカロイ-4が少し少ない。
執筆者:大久保 忠恒
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軽水炉の燃料被覆用に使われるジルコニウム合金.ジルコニウムは熱中性子吸収断面積が小さく,原子炉材料として適している.しかし,高温水中で腐食を受ける傾向があり,また窒素との反応性も強く,含有窒素量が40 ppm 以上になると耐食性が低下する.そこで開発されたのが,Zr-Sn合金のジルカロイである.窒素の害を除くには,スズを約1.5質量% 添加する.ジルカロイには4種類あり,当初ジルカロイ-1ができたが,その後スズを減じ,鉄,ニッケル,クロムを加えたジルカロイ-2ができ,高温水に対する耐食性がよくなった.その後,成形加工性をよくするためスズを減じて改良したジルカロイ-3ができた.また,水素吸収の問題を解決するため,ニッケルを除いて鉄を増加したジルカロイ-4ができた.現在,実用されているのはジルカロイ-2と4である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…通常の形態は,核燃料物質を金属または酸化物か炭化物の固体として燃料の心材とし,核分裂生成物が冷却材にもれることを防ぐために,その外側を金属や炭素で被覆したものである。 軽水炉の燃料は濃縮ウランの熱中性子による核分裂を利用するもので,ウランを酸化物UO2の円柱状の焼結ペレットとし,これをジルカロイというジルコニウム合金の被覆管に密封している。この形式のものは他の動力炉でも使用されており,日本で開発した重水炉の燃料も同様である。…
…マグネシウムの合金であるマグノックスは,金属ウラン燃料の被覆材として炭酸ガス冷却炉に使用されている。軽水炉ではジルコニウムの合金であるジルカロイが,高温の水に対する耐食性も良く広く使われている。天然のジルコニウムにはハフニウムが含まれていて,これの中性子吸収がきわめて大きいので,これを分離除去したものを使用する。…
※「ジルカロイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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