日本大百科全書(ニッポニカ) 「D」の意味・わかりやすい解説
D
でぃー
英語アルファベットの第4字。戸を意味する古代エジプトの象形文字を起源とし、セム文字dalethおよびギリシア文字デルタ(Δ)を経由して、ラテン文字において現在の字体となった。小文字dはギリシア文字デルタ(δ)に対応し、ラテン文字の筆記体およびアンシャル体から生まれた。化学では重水素(ジュウテリウム)の元素を表し、物理では密度あるいは直径を、音楽では2音(ドレミ唱法のレ)を表し、D.C.はダ・カーポ(初めから)、D.S.はダル・セーニョ(その記号から)を表す。中世ローマ数字では500を示す。イギリスの貨幣単位ペニーは、ラテン語のdenarius(古代ローマの銀貨で、『新約聖書』にはpennyと記されている)からd.と略される。また、デシの略として、単位名の前について、10分の1であることを表す(dと記す)。英語では、'dは口語でhadまたはwouldの省略形(You'd better=You had betterまたYou'd like to=You would like toなど)であり、フランス語ではd'はdeの省略形で、次に母音で始まる単語がくるときに用いられる。
[斎藤公一]