化学辞典 第2版 「DL表示法」の解説
DL表示法
ディーエルヒョウジホウ
DL convention
立体配置の表示法の一つ.鏡像異性体を区別するのに,それらが実際に示す旋光性をもとに右旋性(dextrorotatory)のものにはその名称の前にd-を,左旋性(levorotatory)のものにはl-をつける方法があり,その方法は現在でも使われている.他方,分子内の置換基の相対配置の表示法にフィッシャー投影(式)法があるが,その門下のK. Freudenbergは,l(+)-アラニンに図(a),d-グリセルアルデヒドに図(b),d-グルコースに図(d)を用いたので,1941年,生化学会は図(a)と同じ天然アミノ酸であるl-セリンを図(c)で表すことに決定し,小さい大文字のDLを用いることとした.なお,アルドースの場合には,アルデヒド基からもっとも離れた第一級ヒドロキシ基の隣接不斉炭素の配置が基準になり,そのヒドロキシ基が右側にあるものをD,左側にあるものをLで示す.その後,X線結晶解析により,これらの化合物の立体配置は絶対配置そのものを示すことが判明し,立体配置と旋光性を並記するには,D(+)-グルコース,D(-)-フルクトースなどのようにされている.1974年,IUPACでは,糖やアミノ酸だけでなく,すべてのキラル化合物の絶対配置を表すRS表示法が提案されて使用され,普及してきている.しかし,アミノ酸や糖類に関しては,DL表示法がより多く用いられている.その理由は,同項の化合物相互の立体配置の関係が同じものは同じ記号(たとえば,タンパク質構成アミノ酸はすべて符号L)が用いられ,一見して立体化学的関係がわかるからである.しかし,RS表示では,シスチンを除くすべてのL-アミノ酸は(S)-配置で表示されるのに,RS表示の規約上,L-シスチンは(R)-シスチンとなる不便さがある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報