内科学 第10版 「Felty症候群」の解説
Felty症候群(悪性関節リウマチ)
概念
1924年,Felty がRAに脾腫,顆粒球減少を伴う症例を報告し,後にFelty症候群とよばれるようになった.欧米ではRAの1%との報告があるが,わが国では頻度は少ない.好中球減少の機序は明らかでないが,抗体が結合した好中球が脾臓で破壊されることが1つの要因と考えられる.好中球のFc受容体に結合した免疫複合体の役割や好中球の産生や分化に細胞傷害性T細胞や自己抗体が関与している可能性も指摘されている.
臨床症状
一般的に,随伴するRAは活動性が高く,関節破壊が著明である.関節外症状(リウマトイド結節,皮膚潰瘍,多発性単神経炎,漿膜炎,間質性肺炎など)の合併が高率で,乾燥症候群の合併頻度も高い.脾腫は触知できることが多く,また肝腫大もみられる.
検査成績
好中球の持続的減少(2000/μL)が特徴で,500/μL以下では細菌感染症の頻度が高い.骨髄は成熟障害を伴う顆粒球系の過形成を示すことが多い.RA活動性に伴い赤沈,CRP高値がみられ,肝機能障害も高率にみられる.HLA-DR4陽性率は高頻度で85%以上といわれる.リウマトイド因子は95%以上陽性で力価も高く,抗核抗体も過半数が陽性である.その他,G-CSF,ラクトフェリンやシトルリン化ヒストン,好中球細胞外トラップに対する自己抗体が報告されている.
Felty症候群の約30%に大型顆粒リンパ球(LGL)の増殖がみられる.CD8+, CD57+細胞傷害性T 細胞の増殖は,持続的な抗原刺激により活性化されていると考えられ,LGL白血病と表現型や機能は同じである.LGL白血病では白血球減少,脾腫,関節炎,HLA-DR4陽性など臨床像がFelty症候群と類似しており,両者の関連が注目されている.
治療
通常の抗リウマチ薬治療を行うがメトトレキサートが第一選択薬である.中等量ステロイドは好中球減少に対して有効であるが少量で効果を維持することは難しい.G-CSF の持続的投与好中球を1000/μL以上維持する最低量にとどめる.脾摘は2/3程度で有効である.TNFα阻害薬の有効性は明らかでなく,リツキシマブの有効例の報告がある.[鈴木康夫]
■文献
Screiber J, et al: Rheumatoid pneumoconiosis (Caplan’s syndrome). Eur J Intern Med, 21: 168-172, 2010.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報