改訂新版 世界大百科事典 「N-オキシド」の意味・わかりやすい解説
-オキシド (エヌオキシド)
N-oxide
第三アミンの窒素原子に酸素原子が結合した化合物R3N⁺-O⁻をいう。一般には結晶性の化合物で,低分子量のものは非常に吸湿性があり,結晶化に際ししばしば結晶水を含む。水によく溶け,非極性の有機溶媒には溶けない。弱い塩基性を示し,酸と塩をつくる。窒素-酸素の結合は代表的な半極性結合であり,大きな双極子モーメントをもっている。窒素上の置換基は炭素化合物と同様の正四面体配置をとり,それらがすべて異なる場合には光学活性体に分割できる。還元剤(たとえばホスフィンなど)により,アミンに戻る。加熱すると,構造により,ヒドロキシルアミン誘導体R2NORになる場合(マイゼンハイマー転位と呼ばれる)と,ヒドロキシルアミンR2NOHとオレフィンになる場合(コープ脱離と呼ばれる)とがある。N-オキシドは対応する第三アミンを酸化することにより得られるが,酸化剤としては過酸化水素,過酸,オゾンなどがよく用いられる。低分子量のN-オキシドの場合は,ヒドロキシルアミンを徹底的にアルキル化する方法でも合成できる。
執筆者:岡崎 廉治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報