オゾン(読み)おぞん(英語表記)ozone

翻訳|ozone

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オゾン」の意味・わかりやすい解説

オゾン
おぞん
ozone

酸素の同素体。特有なにおいをもつことから、ギリシア語のozein(におう)にちなんで命名された。大気中には、雷雨の発生や光化学反応の結果生じたオゾンが0.02ppm程度含まれている。紫外線に富む高山、海岸、森林などの空気中に存在し、さわやかな感じのもととなっている。ただし、多量に存在するときは、かえって不快感を感じさせる。なお、成層圏には地表の250倍もオゾンを含むオゾン層が存在し、これが太陽光のうち高エネルギーの部分を吸収し、地表への到達を妨げるため生物の生存にたいせつな役割を果たしている。

 乾いた酸素や空気中で高圧放電に際して生じるほか、黄リンが空気中でゆっくり酸化するとき、水をフッ素で分解するとき、紫外線やX線陰極線などが空気中を通過するとき、また硫酸の電解などに際しても生じる。多量につくるには、放電を利用したオゾン発生器などを用いる。

 気体では独特のにおいをもつ淡青色、液体では青色固体では暗紫色である。気体の分子構造は二等辺三角形で、二つの構造の共鳴として表される。


 水には酸素よりもよく溶け、常温では徐々に分解して酸素となるが、二酸化マンガンや白金粉末は分解を促進する。酸化力が強く、銀、水銀も常温で酸化され、過酸化銀Ag2O2および酸化水銀Hg2Oとなる。また、ヨウ化カリウム水溶液からヨウ素を遊離する。これらの反応は、オゾンの検出定量に使われる。有機色素は脱色され、ゴム、コルクなどは侵される。細菌ウイルス除去のため、空気の浄化、上水道の殺菌、廃水処理に用いるほか、香料の合成、脱臭、有機物の構造決定などに用いる。吸入により呼吸器が冒されるので注意が必要である。毒性が強く、微量でも長時間吸入すると中毒するので、きわめて危険である。

[守永健一・中原勝儼]



オゾン(データノート)
おぞんでーたのーと

オゾン
 分子式  O3
 式量   48.00
 融点   -193℃
 沸点   -112℃
 密度   2.144g/L(0℃,1気圧)
 (比重) 液体 1.57(測定温度 -183℃)
 溶解度  49.4mL/100mL(0℃,1気圧)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オゾン」の意味・わかりやすい解説

オゾン
ozone

酸素の同素体。化学式 O3。特異な臭気がある微青色の気体。紫外線が大気中の酸素にあたって生じるが,乾燥空気もしくは酸素中に無声放電を行なわせるか,希硫酸を低温で電解すると,陽極部に生成する。容易に分解し酸素となる。酸化力が強く,銀および硫黄をそれぞれ過酸化銀,三酸化硫黄に酸化する。オゾンの定量はヨウ化カリウム液にオゾンを通し,遊離したヨウ素を定量して行なう。不飽和結合を有する有機化合物のオゾン分解,飲料水の殺菌消毒,繊維の漂白,空気の浄化に用いられる。ただし,微量でも長時間吸入するときわめて有毒。光化学スモッグの原因の一つとして問題にもなった。オゾンが 0.15ppmをこえると結膜刺激,呼吸器への刺激症状が出始める。しかし高層大気のオゾンには生物に有害な紫外線を吸収する働きがあり,近年はオゾン層の減少が国際的な環境問題となっている。(→オゾン層の破壊オゾンホール

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