日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホスフィン」の意味・わかりやすい解説
ホスフィン
ほすふぃん
phosphine
水素化リン(リン化水素)PH3とその誘導体の総称。ホスフィンPH3は、無水のホスホン酸H2PHO3を200℃に熱するか、あるいはヨウ化ホスホニウムPH4Iをアルカリで加水分解してつくる。アルカリ金属やアルカリ土類金属のリン化物を、水または希酸と反応させても得られる。白リンに水酸化ナトリウム水溶液を反応させるとき発生する気体は、大部分がPH3であるが、ジホスフィンP2H4が副生するので、空気に触れて自然発火して燃える。きわめて有毒な無色の悪臭のある気体。融点-133.5℃、沸点-87.7℃。比重0.746(-90℃)。水、ベンゼン、二硫化炭素に溶ける。ホスホニウムイオンPH4+はアンモニウムイオンに比べて不安定である。PH3のアルキルあるいはアリール置換誘導体PR3、PHR2、PH2Rなどもホスフィンとよばれている。これら有機ホスフィンは各種のものが知られている。たとえばP(CH3)3(沸点40℃)、P(C2H5)3(沸点127℃)、P(C6H5)3(融点80℃)などの無色の物質である。これら有機ホスフィンは遷移金属に配位して、安定な低酸化数錯体をつくる。とくにトリフェニルホスフィンP(C6H5)3を配位した錯体はよく知られており、たとえば、ウィルキンソン錯体[RhI(Cl)(P(C6H5)3)3]はオレフィンの水素添加反応の触媒として用いられる。
[守永健一・中原勝儼]