Q資料(読み)キューしりょう(その他表記)Q Source

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「Q資料」の意味・わかりやすい解説

Q資料
キューしりょう
Q Source

マタイ,ルカ両福音書の共通資料として,かつて存在し,両福音書に取込まれたと推定されている資料 (Qはドイツ語の Quelle〈資料〉の略) で,イエスの言葉がその主たる部分を成していると考えられるところから語録資料といわれることもある。推定の根拠は,両福音書が『マルコによる福音書』からの素材を共有しているほかに,イエスの言葉を主に多くの共通素材を有し,しばしば語句上の一致を示していることによる。共通素材の配列両者の間でかなりの一致を示していることも共通資料存在の有力根拠とみなされる。『マルコによる福音書』とともにQ資料を共通資料として認めるいわゆる二資料説は,マタイ,ルカ両福音書のいわゆる編集史的研究を推進する土台となっている。しかしQ資料説には反論もあり,それが一つの文書として存在していたかどうかには疑問の余地があり,Q資料は両福音書に利用される前にすでに口伝伝承として「マタイ版」「ルカ版」に分岐していた可能性も大きい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のQ資料の言及

【原始キリスト教】より

… まずマルコは,受難・復活に至るイエスの生涯を上記(2)の伝承の編集によって復元し,(1)の伝承の宣教内容(福音)に史的状況をとり戻して,ガリラヤの民衆の位置に立ったイエスとの生を示唆することを目的として福音書を創出した。マタイの場合は,《マルコによる福音書》と(2)の伝承,とりわけQ資料(マタイとルカが,《マルコによる福音書》以外に共通の資料としたと考えられている,主としてイエスの言葉から成る仮説的な資料のこと。Qとはドイツ語Quelle(資料)の頭文字をとったもの)および特殊資料(各個福音書にのみ見いだされる特殊な資料)に拠り,彼独自の福音書を編集して,イエスの教えを旧約の律法の完成とみなす立場を打ち出した。…

※「Q資料」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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