あら‐ぬ
- 〘 連体詞 〙 ( 「あらず(不有)」の連体修飾用法が特殊化したもの )
- ① ( そうではないの意から ) そのものとは違った。別の。
- [初出の実例]「いとよくゑみたる顔のさし出でたるも、なほのりたかなめりとて見やりたれば、あらぬ顔なり」(出典:枕草子(10C終)四九)
- ② あたりまえのこととは違ったさまの。
- (イ) そうであってはいけない。望ましくない。不都合な。
- [初出の実例]「男といふものは、あやしきだに、〈略〉あらぬ思ひをつくるものとかや」(出典:狭衣物語(1069‐77頃か)一)
- 「科もなき仏にも、あらぬ口舌(くぜつ)を申懸けたり」(出典:仮名草子・竹斎(1621‐23)上)
- (ロ) 思いもかけない。意外な。
- [初出の実例]「今日はその事をなさんと思へど、あらぬいそぎ先(まづ)出来てまぎれ暮し」(出典:徒然草(1331頃)一八九)
- (ハ) 事実と違っている。迷惑なこと、不都合なことについていう。
- [初出の実例]「あの君故にあらぬ名の立つ」(出典:歌謡・隆達節歌謡(1593‐1611))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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