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仮名草子 かなぞうし

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

仮名草子
かなぞうし

江戸幕府開府の慶長8 (1603) 年頃から,『好色一代男』刊行の天和2 (82) 年までの仮名書きの小説類の総称。時代を反映して,啓蒙教訓的作品が多い。印刷技術の発達を背景に発生した。『うらみのすけ』『薄雪物語』などの恋愛物,『仁勢物語 (にせものがたり) 』『尤草紙 (もっとものそうし) 』のように『伊勢物語』『枕草子』をもじった擬古物,『竹斎』『東海道名所記』などの名所記物,『醒睡笑 (せいすいしょう) 』『私可多咄 (しかたばなし) 』などの咄物,『清水物語 (きよみずものがたり) 』『二人比丘尼 (びくに) 』などの儒仏説教物,『女訓抄』『本朝女鑑』などの女訓物があり,『可笑記』や『浮世物語』は,教訓,批判を日常生活の断片に織り交ぜた注目すべき作。作者には浅井了意安楽庵策伝鈴木正三如儡子 (にょらいし) ,中川喜雲らがいる。

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デジタル大辞泉の解説

かな‐ぞうし〔‐ザウシ〕【仮名草子】

江戸初期に行われた小説類の呼称。婦人・子供向けに、平易な仮名文で書かれた、啓蒙娯楽を主としたものが多い。「恨之介(うらみのすけ)」「一休咄(いっきゅうばなし)」など、室町時代御伽草子の伝統を受ける一方、のちの浮世草子の先駆となった。

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百科事典マイペディアの解説

仮名草子【かなぞうし】

江戸初期に現れた仮名書き小説類の総称。木版印刷術の発達にともない,慶長〜天和(1596年―1684年)ごろ京都中心に行われたもので,啓蒙教訓的色彩が強い。知識人の漢文に対し,一般の武士・町人の読める平易な平仮名を用いたところからの呼称。
→関連項目浮世草子貸本屋信田妻噺本山岡元隣

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世界大百科事典 第2版の解説

かなぞうし【仮名草子】

江戸初期にあらわれた仮名書きの小説類の総称。そのころ日本でも急激に木版印刷術が発達したが,それにつれて流行したもの。すなわち井原西鶴によって確立された浮世草子以前の,主として京都を中心に出版された小説類であって,烏丸光広,如儡子(じよらいし),鈴木正三(しようざん),野々口立圃山岡元隣中川喜雲浅井了意などがおもな作者である。その期間はだいたい1600年(慶長5)ころから82年(天和2)(西鶴《好色一代男》発表年)にわたる。

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大辞林 第三版の解説

かなぞうし【仮名草子】

江戸初期に行われた仮名または仮名交じり文の物語・小説・教訓書・地誌・遊女評判記などの総称。実用性・教訓性・娯楽性などを特色とする。作者に浅井了意・鈴木正三しようさんらがあり、作品に「清水物語」「竹斎」「恨之介」「東海道名所記」など多数がある。室町時代の御伽草子おとぎぞうしのあとを受け、西鶴の「好色一代男」に始まる浮世草子へ連なる。
仮名文もしくは漢字仮名交じり文で書かれた草子類の総称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

仮名草子
かなぞうし

近世初期の慶長(けいちょう)年間(1596~1615)から井原西鶴(さいかく)の『好色一代男』が刊行された1682年(天和2)までの約80年間に著作・刊行された、多少とも文学性の認められる散文作品で、中世の御伽(おとぎ)草子の後を受け、西鶴の浮世草子に接するものをいう。しかし学術用語としてはあいまい不完全な名称で、古く室町時代にこの語が記録にあり、また西鶴の作品をも当時は仮名草子と称していた。語の意味は、真名(漢字)本に対する仮名本という用字による区別にすぎない。当時の出版書肆(しょし)によって編集された書籍目録の分類にみられる仮名とか双紙とかいわれていたものがこれに該当すると考えられる。結局、漢籍仏典医書などの学術書でなく、平仮名で書かれた娯楽・啓蒙(けいもう)的な読み物といえよう。これらは写本で行われたものもあったが、近世初期以来の出版に取り上げられて多く流布した。したがって、従来の文学作品と異なった条件として考える必要がある。
 仮名草子の作者はごくわずかしか知られていない。大部分が作者不詳であり、さいわい作品に署名があったり、書籍目録に作者名が記されていても、伝記を明らかにしえない場合が多い。作者層は、浪人・民間の国学者、漢学者、僧侶(そうりょ)、医師、俳諧(はいかい)師などであったと考えられる。読者は、ごく初期は上層階級であったが、のちに印刷術の発達とともに庶民階級にまで読者層が拡大した。
 研究史としては、明治の後半期に水谷不倒(ふとう)、藤岡作太郎らによって仮名草子が研究対象として取り上げられ、今日に及んでいる。いわゆる仮名草子と称される作品群は、その内容がきわめて多種多様で多方面に分岐し交錯しているため、当然なんらかの整理を加える必要があった。そこで分類の作業を中心に研究が進められ、第二次世界大戦前は潁原(えばら)退蔵、戦後は野田寿雄(ひさお)、暉峻康隆(てるおかやすたか)、田中伸らによって分類が試みられた。次にあげる野田寿雄の分類などが妥当といえよう。(1)教義教訓的なもの 朝山意林庵(あさやまいりんあん)の『清水(きよみず)物語』(1638刊)、辻原元甫(つじはらげんぽ)の『智恵鑑(ちえかがみ)』(1660刊)。(2)娯楽的なもの 三浦為春の『あだ物語』(1640刊)、浅井了意の『御伽婢子(おとぎぼうこ)』(1666刊)。(3)実用本位のもの 中川喜雲の『京童(きょうわらべ)』(1658刊)、浅井了意の『江戸名所記』(1662刊)。
 仮名草子は種類が多様多岐であり、内容も文学性の希薄なものが多いことから、従来は過渡期の文学ということで西鶴研究の階梯(かいてい)として付随的にみる傾向が強かった。作品個々の研究、作者の研究、周辺との関連など残された課題は多いが、今日ではむしろ、未成熟ではあるが仮名草子の多様な性格のなかに、あるいは仮名草子を支えた基盤のうちに、近世文学全般の源流や胎動萌芽(ほうが)を積極的にみていこうとする姿勢が定着しつつある。[坂巻甲太]
『前田金五郎・森田武校注『日本古典文学大系90 仮名草子集』(1965・岩波書店) ▽神保五彌他校注・訳『日本古典文学全集37 仮名草子集・浮世草子集』(1971・小学館) ▽市古貞次・野間光辰編『鑑賞日本古典文学26 御伽草子・仮名草子』(1976・角川書店)』

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