日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンスガー」の意味・わかりやすい解説
アンスガー
あんすがー
Ansgar
(801―865)
ベネディクト派コルビー修道院僧。「北欧の使徒」と称される。デンマーク王ハラール・クラークHarald Klak(在位812~813、819~827)の受洗(826)後、王直属司教としてデンマークで布教。スウェーデン商人使節が到来して伝道者派遣を要請したとき、ルイ敬虔(けいけん)帝(ルイ1世)によって派遣された(830)。航海途上で海賊の襲撃を受けたが、交易地ビルカBirkaに達し、1年半の伝道活動に従事。帰国後、北方伝道を目的とするハンブルク大司教座の初代大司教となった(832)。デンマーク王ホーリク1世HorikⅠ(在位827~854)のハンブルク攻撃の際(845)ブレーメンに逃れ、のちに統合されたハンブルク・ブレーメンの初代大司教に就任した(849)。ホーリク1、2世HorikⅡ(在位854~864ころ)と和解後、デンマークのヘズビューHedebyとリーベRibeに伝道教会を建立(850ころ)。ビルカを再訪し、教会を再建した(853~854)。ブレーメンで没した。彼は敬虔な北欧伝道の先駆者であったが、その成果はただちに結実はしなかった。彼の生涯は後継者リンベルトRimbert(830?―888)の著した『アンスガー伝』Vita Anskarii(870ころ)に詳しい。
[荒川明久 2017年11月17日]