ドイツ北西部の都市。ハンブルクに次ぐ同国第二の港湾都市で、ウェーザー川下流部沿岸を占める。人口53万9400(2000)。約60キロメートル離れたウェーザー川河口の外港ブレマーハーフェンとともにブレーメン州を構成し、その州都でもある。同州は面積404平方キロメートル、人口66万0200(2000)。ドイツ最小の州である。ウェーザー川北東岸の砂丘上に、舟運、商業、宗教上の中心都市として発達し、市街地は周辺の微高地と対岸に拡大した。ウェーザー川沿いの内陸と外洋を結ぶ要地にして同川の渡河点にあたり、今日もライン、ルール地方とハンブルクを結ぶ主要な鉄道・道路がここを通る。南方ハノーバーを経てフランクフルト方面への連絡もよい。
ブレーメン経済の中心は貿易で、タバコ、綿花などの農産物を輸入し、石炭、肥料、スクラップなどを輸出する。ドイツの大郵船会社北ドイツ・ロイド社は、1857年にここに設立された。工業では、貿易と関連する造船、機械、たばこ、食品のほか、繊維、自動車、金属加工などが重要である。州の行政機関、連邦の郵政・海運などの機関があり、文化施設も整っている。第二次世界大戦の戦災で中世の妻入の市民家屋や公共建造物が破壊されたが、マルクト(市場)広場の周りの司教座教会聖ペトリ大聖堂(12世紀創建)、ルネサンス様式の市庁舎(1405~09)、ギルド館(16世紀)、市の守護神の中世騎士ローラントの像(1404)などは再建された。マルクト広場の入口にグリム童話『ブレーメンの音楽隊』の像がある。
[齋藤光格]
市の歴史は、787年の司教座設置に始まる。845年大司教座に昇格し、スカンジナビアへのキリスト教布教の拠点となり、また888年市場開設特許状が皇帝より賦与された。1186年皇帝フリードリヒ1世によって都市自治が認められ、市民が大司教の都市支配から完全に脱したのは13世紀のことである。1358年ハンザ同盟に加入し、その有力な一員としてイングランド、ネーデルラントなどと貿易したが、内部的にはいわゆるギルド闘争に苦しみ、富裕市民の寡頭支配がかろうじて維持された。宗教改革では、最終的にはカルバン派が制し、1646年帝国自由都市となり、1815年ウィーン条約によって自由都市としての地位が内外に確認された。1827年外港ブレマーハーフェンを建設し、ハンブルクに次ぐドイツ第二の商港となった。
[瀬原義生]
ドイツ北西部の都市。約65km下流の外港ブレーマーハーフェンとともにブレーメン州をなす。人口66万3200(2004)。ウェーザー川に沿い,ハンブルクに次ぐ同国第2の港湾都市。羊毛,木綿,タバコ,穀物などが輸入され,市内外にはこれらの原料を加工する産業が栄え,またウェーザー川下流では造船業が盛ん。旧市街は,第2次世界大戦中に甚大な被害を受けたものの,復興によって旧時の姿を今日によく伝える。17世紀初期に完成した北方ルネサンス様式の市庁舎も復元され,その前にはブレーメンの象徴である石造のローラント像(1405ころ)が立ち,市庁舎のかたわらには名高い〈ブレーメンの音楽隊〉の彫刻が置かれている。大聖堂をはじめとして由緒ある建物も多い。同じ北ドイツのハンブルク,リューベックなどと同様,建造物は主として煉瓦造りで,北ドイツで最も景観の美しい都市の一つに数えられる。フランク王国時代の787年に司教座が置かれ,北方伝道の拠点となったことがブレーメンの起源であり,ハンブルクにすでに置かれていた大司教座もやがてブレーメンに移された。この間商業中心地としても栄え,10世紀にはドイツ皇帝から商業に対する保護特権が与えられた。それ以降は,宗教都市としてよりも貿易の基地,商業都市として成長し,12世紀末以後,商人団体の存在が確認される。こうした商人層の台頭とともに大司教支配は漸次後退し,しだいに商人層が独立的に政策を遂行するようになった。その頂点に立ったのは商人中とくに有力な少数門閥であり,商人貴族の勢力はハンブルクに比べて安定していた。ハンザ同盟加盟都市の中でもハンブルクをもしのぐ格式をもって遇された。しかしハンザに対する連帯意識はさほど強固ではなく,ハンザから分離する傾向を示した時期もあった。宗教改革時代に急速に新教化し,ハンザ全体が衰亡した三十年戦争中,リューベック,ハンブルクとともに三市同盟を結び安全保障を図った。この三市同盟は結局はハンザに代わるものとして近代まで存続し,他の2都市とともにブレーメンが今日もなお〈ハンザ自由都市〉という称号を有するのはこのためである。19世紀以降アメリカ大陸との貿易が盛行を見,ブレーメンはこの世界貿易によって港湾都市として著しく地位を高めた。ナポレオン時代フランス領に編入されて一時繁栄が足踏みをしたものの,解放後再び発展し,多くの有力な企業が設立されてドイツ経済の発達に貢献した。
執筆者:高橋 理
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ドイツ西北部,ヴェーザー川下流の港湾,商業都市。外港ブレーマーハーフェンとともに一連邦州ブレーメンを構成。787年司教区ブレーメン設置。その後商業都市として発展,13世紀以後ハンザ同盟の有力メンバーであった。
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
…上流部フルダ川に注ぐエダー川には高さ45mのエダー・ダムがあり,長さ27kmに及ぶ貯水池は早春の高水時に水を集めヘッセン州に電力を供給するほか,水量の少ない夏にもウェーザー川の航行をカッセルまで可能にした。また,ブレーメンより下流部では水深が大で,大洋航行船舶が往来し,水上交通路として重要である。支流のフンテ川,アラー川なども舟運に利用される。…
…ドイツ北西部,ブレーメン州の海港都市。ウェーザー川の河口右岸に位置。…
※「ブレーメン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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