改訂新版 世界大百科事典 「カタリーナ」の意味・わかりやすい解説
カタリーナ
Katharina
S.フロイトによって,《ヒステリー研究》(1895)中で報告された症例の一つ。フロイトが夏の旅行中,アルプス山中の宿で会った18歳の少女で,吐きけや頭重感などで苦しんでいた。フロイトは彼女の話から,ヒステリー発症の心理的メカニズムについて次のように考えた。すなわち,彼女は14~15歳ころ叔父に性的誘惑を受けたが,無知からその意味がわからないままでいた。しかし,16歳になって従姉と叔父の性的場面を目撃するに及んで,過去の性的体験のもつ意味が理解され,それとともに心的外傷としての力を発揮するに至った。その結果,外傷体験を想起すまいとする防衛が働き,抑圧された不安や嫌悪感が転換されて身体症状が生じた,と考えたのである。
執筆者:馬場 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報