改訂新版 世界大百科事典 「ヒステリー研究」の意味・わかりやすい解説
ヒステリー研究 (ヒステリーけんきゅう)
Studien über Hysterie
S.フロイトとJ.ブロイアーによる共著として,1895年に刊行された著作。ブロイアーによるアンナ・Oの症例,フロイトによる四つの症例(エミー・フォン・N,エリーザベト・フォン・R,カタリーナ,ルーシー・R)と〈ヒステリーの心理療法〉の論文,両者による〈ヒステリー現象の心的機構〉の論文などからなる。ブロイアーは催眠によってヒステリーの治療をしており,フロイトも初めその影響下にあった。しかし,やがてフロイトは催眠には一定の限界があることに気づき,無意識を意識化する方法として自由連想法を発見し,これによって精神分析が誕生した。また,ヒステリーの原因として,ブロイアーが類催眠状態を重視したのに対し,フロイトは性衝動と自我によるその抑圧を重視し,両者はしだいに離れていくが,そのような経緯が各症例報告を通して読み取られて興味深い。
執筆者:馬場 謙一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報