カナー(英語表記)Leo Kanner

改訂新版 世界大百科事典 「カナー」の意味・わかりやすい解説

カナー
Leo Kanner
生没年:1894-1981

アメリカの児童精神医学者。オーストリアの小都市コレコフに生まれ,ベルリン大学に学ぶ。卒業後,心臓の研究に従事していたが,1924年渡米,内科医を経てヘンリー・フィリップス研究所の特別研究員として精神医学研鑽(けんさん)を積む。さらに,ジョンズ・ホプキンズ大学でA.マイヤーに師事,能力を高く買われ,3年間の特別研究員の期限が切れた30年,同大学小児科病院(ハリエット・レーン・ホーム)にアメリカで最初の児童精神科部門を開設・主宰した。35年に発刊された著書《児童精神医学》は好評のうちに版を重ね,日本語をはじめ,各国語に翻訳されている。43年今日いう自閉症児11例を初めて報告し,翌年これを早期幼児自閉症と命名した。72年には世界最初の自閉症専門の学術雑誌を創刊した。日本にも彼に師事した学者知己が多く,学界に大きな影響を及ぼしている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のカナーの言及

【自閉症】より

… 一方,児童精神医学の領域でも,著しい行動異常や情緒的混乱を示す子どもが自閉性ないし自閉思考を中心症状として児童分裂病childhood schizophreniaの名称のもとに記述,報告されるようになった。なかでもL.カナーは1943年に,それまで精神遅滞の枠内で扱われていたであろう子どもで,生後間もなくから著しい自閉を示す11例の児童を,感情的接触における自閉的障害autistic disturbance of affective contactとして報告し,翌年2例を追加して早期幼児自閉症early infantile autismの病名を与えた。これが今日,自閉症として広く知られている症候群である。…

※「カナー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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