改訂新版 世界大百科事典 「カレビポエク」の意味・わかりやすい解説
カレビポエク
Kalevipoeg
エストニア民族の神話的英雄カレビポエク(カレブ王の王子)を主人公に,彼の冒険談に彩られた生涯を描いた叙事詩的な作品。19世紀前半の民族的ロマン主義の影響をうけ,直接にはフィンランドの叙事詩《カレワラ》の出現に刺激されて世に送られた。20章約1万9000行に及ぶ大作は,フェールマンF.R.Faehlmann(1798-1850)の手でエストニア各地から収集された散文の資料をもとに,友人のクロイツワルトF.R.Kreutzwald(1803-82)が民謡の韻律や対句法を用いて詩の形式でまとめあげたものである。出版にあたって当初多くの困難にであったが,1862年,普及版が発行されて国民的反響を呼んだ。これ以後,エストニア人がたどった苦難の歴史のなかでもくりかえし版を重ねて,英,独,露,フィン語などにも翻訳され,また《カレワラ》の場合と同様,文学,音楽,絵画,彫刻などの分野にも大きな刺激を与えてきた。
執筆者:菊川 丞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報