改訂新版 世界大百科事典 「カンバセーションピース」の意味・わかりやすい解説
カンバセーション・ピース
conversation piece
主としてイギリスで用いられる美術史用語で,集団肖像画の一形式を意味し,次のような限定がある。(1)だれであるか特定できる複数の人物(家族や集団)が,理想化せず飾りたてない姿で描かれている。(2)私的な場に飾る肖像画で,寸法もそう大きくない。(3)画中の,少なくとも一部の人物が,互いに会話を交わしているか,なんらかのコミュニケーションを行っている様子で描かれている。(4)背景は戸外であれ室内であれ,画中人物の生活環境を詳細に表している。17~18世紀オランダで流行した富裕な市民を日常的な場で描く集団肖像画がその起源である。18~19世紀に各国で行われるようになるが,肖像画愛好の伝統のあるイギリスでことに好まれ,〈カンバセーション・ピース〉の語も18世紀初めのイギリスで用いられ始めた。ホガース,ゲーンズバラ,デービスArthur Devis(1711-87),ゾファニーJohann Zoffany(1734か35-1810)らが,この分野の代表的画家。写真の発明により衰退した。
→肖像
執筆者:鈴木 杜幾子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報