発明(読み)はつめい

精選版 日本国語大辞典 「発明」の意味・読み・例文・類語

はつ‐めい【発明】

〘名〙
[一] (━する) かくれた物事をあらたにひらき明らかにすること。
① 物事の道理意味などを明らかにすること。明らかにさとること。
※江吏部集(1010‐11頃)中「昔高祖父江相公、為忠仁公之門人顧問〈略〉今匡衡為相府之家臣、時々備下問発明
※福音道志流部(1885)〈植村正久〉四「吾がこころの〈略〉道義上殆ど死したるものの如くなるを発明し茫然自失するに至るならん」 〔後漢書‐徐防伝〕
② 理論や方法などを新しく考え出すこと。創案
※集義和書(1676頃)八「格物致知の心法は、古昔の経にもなく、孔聖の語にも見え侍らず。子思初て発明し給たるか」
③ まだ世に知られていない物事、原理法則、あるいは土地などを初めて明らかにすること。最初に見つけ出すこと。発見
暦象新書(1798‐1802)上「是訣は、初め契礼爾(ケプレル)といへる人、六緯の星に於て、発明せし所なり」
機械、器具類、あるいはそれに関する技術を初めて考案すること。
※写真鏡図説(1867‐68)〈柳河春三訳〉二「暗箱中に於て、紙に画像を写し出す事を発明せり」
[二] (形動) 考え、悟る心のはたらきがすぐれていること。賢いこと。また、そのさま。聰明。利口。利発
日葡辞書(1603‐04)「Fatmeina(ハツメイナ) ヒト
[語誌](1)もともとは(一)①のような道理などを明らかにして悟るという意味で、そこから(二)の「聰明」という意味が生じ、近世では、(二)の意が中心的であった。
(2)幕末から、英語の invention と discovery の訳語として使用され始める。当初は、まだ「発見」という語がなかったために、現在の「発見」の意味も表わしていた。

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デジタル大辞泉 「発明」の意味・読み・例文・類語

はつ‐めい【発明】

[名](スル)
今までなかったものを新たに考え出すこと。特に、新しい器具・機械・装置、また技術・方法などを考案すること。「必要は発明の母」「蒸気機関発明する」
物事の道理や意味を明らかにすること。明らかに悟ること。
文明進歩は…其働の趣を詮索して真実を―するに在り」〈福沢学問のすゝめ
[名・形動]賢いこと。また、そのさま。利発。
「息子たちのなかで際立って―なのと」〈中勘助・鳥の物語〉
[類語](1考案案出創案発案新案工夫創造独創一工夫一捻り創意創見編み出す捻り出す/(利口利発聡明そうめい賢い怜悧れいり慧敏けいびん明敏才気煥発かんぱつ穎悟えいご利根賢明さと鋭敏機敏俊敏鋭い目聡い賢しい過敏敏感炯眼けいがん英明英邁犀利さいりシャープ

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改訂新版 世界大百科事典 「発明」の意味・わかりやすい解説

発明 (はつめい)

現在の用法では一般に,まだ知られていない物事,原理・法則などを初めて明らかにすること,また,特に機械・器具類あるいはそれらに関する技術を初めて案出することをいう。漢語の〈発明〉には,古代中国の五方神鳥のうち,東方に位置する鳥の名で,転じて鳳凰の朝鳴くことの意もあるが,《史記》《漢書》などでは開き明らかにする,すなわち〈発見〉の意で用いられた。そこから日本では考え,悟る心の働きがめざましいこと,すなわち賢いことをも指すようになった。

 英語,フランス語の〈invention〉の語源であるラテン語のinventioは,本来,ある考えなどが心の中にやって来るとか発現するという意,またドイツ語の〈Erfindung〉は見つけ出す意に基づいている。

 このように発明と発見discovery(英語の原義は〈覆いを取ること〉)は,古くは同意語として用いられ,区別されていなかった。英語のinventionに相当する語は各国語の辞典で発見の意味にも用いられている。しかし15世紀以降,地理上の発見が相次ぎ,自然科学が発達するにともない,発明と発見の語義は徐々に分かれ出した。そして19世紀末以降,有機合成化学が発達すると,染料をはじめとする天然の化合物が人工的に作り出されるようになり,この合成された化合物と天然の化合物を区別することが不可能になり出した。それで特にドイツにおいて,特許法の保護対象を合成された化合物(化合物の製造方法の発明)に限定するために,天然に存するか,存する可能性がある新しい現象や物質・生物などの確認を〈発見〉として発明から除外するようになった。なおこの傾向は,第2次大戦以降,高分子や半導体など天然に存しない化合物が合成されたり,遺伝子工学により天然に存するはずのない生物が作り出されたりするようになったため,物質や生物についても発明がありうることとなり,再びこの区別はあいまいになってきている。

人類の文明は,原始的な狩猟や農耕技術の発明や文字の発明から近代的技術の発明にいたる開発の積重ねの上に成立している。古代の発明は,数千年の歴史に埋もれているため発明者も知られず神に仮託されているものが多い。中国の神農(しんのう)(農業と医術),ギリシアのプロメテウス(火),日本の少彦名(すくなびこな)命(医術)などがそれである。国家が成立し,官僚機構により記録が史書として編纂されるようになると,発明者も記録されるようになる。中国において紙や指南車の発明者が現在に伝えられているのは,これらの史書による。しかし史書編纂の習慣がないかあるいは乏しい所では,技術を集大成した者の名しか伝わらない(ローマの建築家ウィトルウィウスなど)。中世においては,ヨーロッパに典型的なように職人がギルドの規制下にあり,優秀な技術者は周辺住民に知られていたので,製品に署名する習慣はなく発明者も多く不明であるが,職人が遍歴をはじめると発明者の名も残されるようになる。これらの名は都市や修道院の記録や特許状に散見されるようになる。しかし発明者の名が積極的に後世に残されるようになったのは,発明による技術改良が経済活動に直接関係するようになった産業革命以降のことである。

発明には,電気技術に関するものとか機械技術に関するものなどという分け方もあるが,たくさんの発明をあつめて,その過程を分析すると,大きくいって二つのタイプ(〈画期的発明〉と〈蓄積的発明〉)に分けられることがわかる。また時代によっては画期的発明がたくさん発生するときと,あまり発生しないときがある。画期的発明としてはワットの蒸気機関,エジソンの白熱電球,ショックリーのトランジスターなど多数の発明と発明者を列挙することができる。一方,蓄積的発明としての蛍光灯,半導体集積回路,テレビジョンなどは,個々の部分については発明者をいえるとしても全体としてはだれが発明したかを指摘することができない。

 画期的発明は,多く〈新しい現象や原理の発見に基づくものseed-oriented〉であって,素子に関するものである。この場合,発明者や発明者のグループは限られていて特定することができ,またその技術分野の専門家ではないことが多い。また発明されたものは,過去に予想されていたものではないから,一度発明された技術は,次々と新しい機能や用途を広げていくのである。ワットの蒸気機関の場合,過去のエンジンと異なり地形的な落差を必要としなくなったので,車に積み込んで蒸気機関車を作ることができた。一方,蓄積的発明は,その原理などは良くわかっていて,多くはその時代の〈一般的な要望(社会的要求)にこたえるものneed-oriented〉であり,システム的な技術に関するものが多いが,素子である蛍光灯の場合などは製造方法の解決のために多数の技術が開発される必要があった。このタイプの発明に関与する者は多数の専門研究者の群であり,特に一人または数人の発明者を特定することはできない。むしろ企業の中央研究所が寄与することが多い。このタイプの発明は,その技術の目的や機能・用途などがはじめから明確なので,発明が完成した後に新しい用途が開けるということはほとんどない。なお画期的発明は,今までの技術を使いきった後(例えば戦争の後)に,今までの技術のシステムを変革する形で登場し,その後その新しい技術を使いきるまで蓄積的発明が続く。戦争中は新たな技術開発をする余裕がないので,在来の技術の組合せを変える開発が多く,システム的改良が中心となるため,画期的発明はあまり登場しない。

新しい技術の開発が各国,各企業の重要な戦略となりだすと,いかにして画期的発明を生み出させるかが重要な問題となった(創造性の開発)。蓄積的な技術改良には,大量の研究費とおおぜいの研究者がいればそれだけ好ましいが,それが必ずしも画期的発明や優秀な研究成果を生ずるとはいえない。画期的発明が生ずるときの研究の条件は次のとおりである。(1)研究者に研究の熱意があること,(2)研究者は研究テーマについて十分な知識があること,(3)研究者はその技術についてやや素人であること(現在の実験的常識から自由であること),(4)研究者が研究上の短期的目的で拘束されず自由であること,(5)異なった分野の者が連携して研究していること,(6)設備その他の面での条件が良いこと。以上のうちやや無視できるのは(2)と(6)であり,不可欠なのは(1),(4),(5)であり,そのための研究管理が必要となる。多くの画期的発明が誕生したときにはこれらの条件が満足されていたのであり,また天才的な発明者であるレオナルド・ダ・ビンチやエジソンなどは,個人でこれらの条件を満たしていたのである。

一度得られた着想を具体化し,商品にするためには,実用化研究が必要である。トランジスターを例にとると,その原理の解析,各種特性のある素子の開発,材料の調整や合理的生産方法そして試験方法の確立,それを利用する回路理論の展開,などが行われないと実用化に至らないが,これらが確立することによって従来の真空管にとって替わったのである。

発明は発明者の知的な産物であることと,研究に投資したものを回収する必要があるために特許権,実用新案権など,第三者排他権が与えられている。この第三者排他権を侵害すると不法行為となる。この排他権は,民法の規定の相違により,発明により生じた権利を特許権で確認するという法制(フランス,イギリス,アメリカ)と特許出願により権利が形成されるという法制(ドイツ,日本)に分けられる。前者においては,真っ先に発明した者が権利を受けるが(イギリスは例外),後者では多く真っ先に出願した者に権利を与えている。この第三者排他権は10~20年程度のものであって,その後発明はだれでもが使用できることになる。

技術に対する政策は,はじめ技術導入の促進に向けられ,後に国産技術の保護・奨励に転ずる。その手段としては,補助金その他の特典の供与,特権・特許権等の付与,名誉を与えること(表彰)などが行われる。補助金は研究開発に関するものと,実施化に関するものがある。名誉を与えるものとしては,日本の場合発明者や企業家に藍綬褒章,紫綬褒章を下賜しているほか1930年と39年には〈十大発明家〉の宮中賜餐が行われ,当時の発明精神発揚の一翼をになっている。
執筆者:

発明は特許法では〈自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの〉と定義されている(特許法2条1項)。自然法則とは,自然界において,経験則上一定の原因で一定の結果が得られるようなものを指す。自然法則を利用していないもの,例えばスポーツのルール,経済法則等の人為的取決めは,特許法上の保護の対象とはならない。発明に特許が与えられると,出願から20年間その技術思想の独占的実施権が認められる。発見が一般に単に未知のものを見つけ出すことを指すのに対し,発明とは新しいものを創造する技術的思想であり,両者は異なっている。しかし例えばある物質に殺虫効果のあることを発見すれば,そこからその物質を成分とする殺虫剤の発明は容易であり,その点で両者は類似しているともいえる。たとえ発見であってもそれを目的的に利用すれば発明となりうる。
特許 →発見
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「発明」の意味・わかりやすい解説

発明
はつめい

科学や技術を発展させる一要素として「発見」とともに使われることばであるが、明確な定義はない。一般に発明とは、ある目的実践のために自然科学的知見や法則を利用して新しい方法や手段を創造することであり、人間的諸活動の発展の物質的基礎といえる。物質的な創造という点で、意識あるいは認識と関連する発見とは区別される。

 今日、発明は特許制度という法体系のなかに位置づけられ、その所有者の諸権利が社会的に認められている。特許権の得られる発明とは、「自然法則を利用した技術的創作のうち高度のもの」であり、自然法則に反するものに特許権が与えられることはない。永久機関に関する特許が認められないのはそのためである。また産業上利用できること、新規性をもつことなどがその要件になっている。

 古代人が石斧(せきふ)や弓矢などの道具を発明したように、そもそも人類は生産的実践の長い歴史のなかで、豊かな物質生産を目ざして、さまざまなものを発明してきた。しかし生産が奴隷によって担われていた古代ギリシア時代には、生産力と結び付くような発明は、ほとんどなされなかった。また軍事力による圧政の古代ローマ時代には、その発明の多くが戦争機械や軍事的意味をもつ土木技術に集中していたといえる。こうしてみると発明は、それへの社会的要求、目的、利用のされ方などによって、当該する時代の社会的・歴史的段階に規定されているといえる。

[高橋智子]

発明の源泉

発明は創造的なものである。とはいえ無からなにかを生み出すことではない。また発明家を天才や奇人のように描き、その発明の源泉を単なる個人のアイデアや能力のみに求めようとするのは間違いである。

 蒸気機関の発明者ワットの場合、ルナ・ソサイアティの一員としてJ・プリーストリー、W・スモールといった当時の優れた科学者との交流なしにその活動を評価しえない。そしてボールトンからの経済的援助は、ワットの蒸気機関の原理を物在化するうえで不可欠であったことなどはよく知られた事実である。またエジソンの場合をはじめ、発明の優先権を争う特許訴訟の例は枚挙にいとまがない。

 つまり、個人の名をもって語られる発明でも、それには多くの場合、厚みのある前史があり、また当該発明にかかわる類似の、あるいは近接する発明がみられる。さらに一つの発明といえども、さまざまなレベルでの協力者が存在するのである。

 こうした歴史的事実からも、発明は、それまでの科学的知識や技術の進歩のうえに積み重ねられたものであり、「社会的、歴史的な過程」としてとらえられなければならない。

 発明は、長い歴史的経過をとってみれば、当該の時代の社会的要求にこたえるものであるが、その所有者の社会的諸関係を反映し、世に出ない場合もおこりうる。反対に、ひとたび世に出た発明は生産力を増大させ、さらに新たな発明の礎石ともなる。また人類の物質的生活をいっそう豊かにする契機ともなる。

 つまり、発明は、労働手段の体系ともいえる技術の発達の、主体的担い手による創造的な活動であるともいえる。

[高橋智子]

発明の影響

フランシス・ベーコンは、近代国家が成立する17世紀、科学的知識に基礎を置く発明が人類に富をもたらすであろうことを予見した。発見・発明を行うための研究所としてソロモン館を構想し、発明を生産技術と結び付け、富の生産と深くかかわることを示したその洞察は重要である。

 1733年J・ケイの飛杼(とびひ)の発明が織布速度を倍加させ、これが契機になって紡績機と織機が相互に発展し、やがて繊維機械を駆動する蒸気機関、機械をつくる機械――工作機械の発明・改良を促し、産業革命を完成させたことは周知のことである。かくして産業革命以後、生産的実践から抽象された科学的知見を物在化させることが、生産力の増大をもたらすというベーコンの考えは現実のものとなった。この創造的活動としての発明はますます産業との結び付きを深め、社会的な存在になり、1883年、特許に関する国際的な同盟条約が締結されるに至ったのである。

 資本主義が独占段階へと移行する19世紀末、企業はその内部に科学者・技術者を集めた研究所を設立し始める。それは科学や技術の進歩が、もはや個人的努力ではなしがたい段階に至ったことの表れであると同時に、発明が企業利益と結び付いた研究・開発になったことを示している。利潤優先のあまり、発明が一企業に集中し独占され、技術進歩がゆがんでしまう事態も生じている。発明は企業内研究所をはじめ公的研究機関、大学の研究室からも生み出されるが、その量的・質的な発展と時間の短縮は多額な費用と組織を必要とするに至っている。この意味で企業の優位性は否定できない。

 また軍事的性格を帯びた国家主導の研究・開発から生み出される兵器とその体系の創造は、発明の本来もっている意義・役割とは相いれないものである。同じ「発明」とはいえ、自己否定的で公開されることのない創造を許すことは、本来の発明をも枯渇に導きかねない。人類が健康的で文化的でより豊かに発展するためにも、発明を生み出す社会のあり方を展望することがますます必要になっている。

[高橋智子]

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普及版 字通 「発明」の読み・字形・画数・意味

【発明】はつめい

工夫。

字通「発」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の発明の言及

【職務発明】より

…従業者,法人の役員,国家公務員または地方公務員がなした発明で,使用者,法人,国,または地方公共団体の業務範囲に属し,かつその従業者等の現在または過去の職務に属するものを指す。その職務発明は原始的に従業者等に属するが,使用者等は無償の実施権を取得する。…

※「発明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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