コーン(Hans Kohn)(読み)こーん(英語表記)Hans Kohn

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

コーン(Hans Kohn)
こーん
Hans Kohn
(1891―1971)

歴史家。チェコの首都プラハに生まれる。とくにナショナリズムの運動や理論の研究者として著名。20世紀前半のチェコスロバキア多年にわたってドイツとの民族闘争を行っていたことが、大学時代の彼にナショナリズムに対する関心を抱かせた。第一次世界大戦に従軍し、シベリアで一時期捕虜生活を送った際にロシアの社会、文明、民族問題に接する。1925年にエルサレムへ行き中東、西アジアのナショナリズム運動を研究、34年にスミス・カレッジのヨーロッパ近代史の教授となり、62年ニューヨーク市立大学の教授を退任後も、ヨーロッパ、アメリカの各地で教鞭(きょうべん)をとりながら研究を続けた。彼は、近代思想の二つの柱ともいうべき自由主義とナショナリズムの観点から、多民族国家を比較し、貴重な研究を多数残している。著に『ナショナリズムの思想』(1944)をはじめ、『預言者と民衆――19世紀ナショナリズムの研究』(1946)、『現代ロシアの精神』(1955)、『ドイツの精神』(1961)、『ハプスブルク帝国、1804―1918年』(1961)、『絶対主義と民主主義、1814―1852年』(1965)などがある。

田中 浩]

『長谷川松治訳『民族的使命――ヨーロッパ・ナショナリズム論考』(1953・みすず書房)』『稲野強他訳『ハプスブルク帝国史入門』(1982・恒文社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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