日本大百科全書(ニッポニカ) 「冠(こうぶり)」の意味・わかりやすい解説
冠(こうぶり)
こうぶり
「かがふり」の転で、頭にかぶるものの意。推古(すいこ)朝に冠位十二階が制定されたとき(603)、位階の等級を表示するため、被(かぶ)り物の色や生地を規定し、朝服用に確立された。転じて、官職を「つかさ」というのに対して、位階をさす語となったが、昇殿を許されて位用の給与を受ける五位を栄爵(えいしゃく)といったので、とくにこの位をいうことが多い。五位に叙せられることを「冠を得る」「冠を賜る」という。また年爵を意味する場合もある。「冠を挂(か)く」とは、「挂冠(けいかん)」の訓読で、辞職すること。一方、男子は元服式の際に冠(烏帽子(えぼし))をかぶるところから、元服すること(「初冠(ういこうぶり)」「加冠」)をもいった。なお、「かんむり」も「かがふり」が転じた語である。
[兼築信行]