訓読(読み)クンドク

デジタル大辞泉 「訓読」の意味・読み・例文・類語

くん‐どく【訓読】

[名](スル)
漢字を、その意味にあたる日本語読み方で読むこと。「花」を「はな」、「草」を「くさ」と読む類。くんよみ。⇔音読
漢文を日本語の文法に従って、訓点をつけて読むこと。

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精選版 日本国語大辞典 「訓読」の意味・読み・例文・類語

くん‐どく【訓読】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 漢字に国語をあてて読むこと。漢字を訓読みで読むこと。また、漢文を国語の文法に従って訓点をつけ読むこと。⇔音読(おんどく)。〔文明本節用集(室町中)〕〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「総べて読方は、成る可く、音読を避けて訓読に従ふ可し」(出典:幼学読本(1887)〈西邨貞〉初歩)
  3. 特に、経典の読み方で読むこと。転じて、そのような調子で、ものを読んだり歌ったりすること。
    1. [初出の実例]「くんどくのやうだと囲い三を下げ」(出典:雑俳・柳多留‐六(1771))
  4. むずかしい言葉などを、わかりやすく説いて聞かせること。
    1. [初出の実例]「友達のよしみに訓読(クンドク)して聞かせよう」(出典滑稽本和合人(1823‐44)初)

くん‐よみ【訓読】

  1. 〘 名詞 〙くんどく(訓読)音読み
    1. [初出の実例]「訓読 クンヨミ」(出典:運歩色葉集(1548))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「訓読」の意味・わかりやすい解説

訓読
くんどく

漢字、漢文についての読み方の一つ。音読(おんどく)の対で、倭読(わどく)(和読)ともいう。次の二つの場合がある。

(1)一字一字の漢字について、その意味にあたる大和詞(やまとことば)で読むこと。訓読みともいい、「山」を「やま」、「川」を「かわ」と読む類(たぐい)である。このように、その字について定まった日本語の読みを「訓」という(対して、「サン〈山〉」「セン〈川〉」と読む類を音読みともいう)。訓は、中国語である漢文の日本語への翻訳の過程で、一字一字の読みとして定着したもので、『万葉集』の借訓仮名によって、奈良時代にはかなりの字について訓の成立していたことが知られる。また、訓は、漢文の訓読によって生じたものであるから、その字の文脈上その他の意味によって、多数の訓をもつものも出てくる。鎌倉初期の辞書『字鏡集』では、「行」という字について42語の訓をつけている。また、今日、訓とされているものについても、「うま(馬)」「うめ(梅)」などは古い字音に基づくとされ、「かわら(瓦)」「てら(寺)」などは梵語(ぼんご)や朝鮮語から入ったものといわれる。このように、訓とされているものについても、出自のうえでかならずしも明確とはいいがたいものもある。

(2)訓読のもう一つの場合は、漢文を日本語の語法に従って読み下すことをいう。たとえば、『論語』の「有朋自遠方来、不亦楽乎」を「ともゑんぱうよりきたるあり、またたのしからずや」と読む類である。中国語の文章である漢文と日本語とは、言語の構造が異なっている。そのため、語順の差を返読で調整するために返点(かえりてん)を付し、助詞助動詞を補ったりするために、ヲコト点(乎古止(おこと)点)や仮名をつけ、漢字の読みを示すなどして、日本語の語法に従って対訳的に読めるようにくふうされた。その場合、語はすべてが訓読みされたのではなく、先の例の「ゑんぱう」のように字音語として読まれたものも含むが、それも日本語の文構造のなかに収められたもので、全体としては日本語ということになる。漢文訓読の資料は、奈良時代末以降のものなどが残っており、当時の言語資料として貴重である。また、漢文訓読は古代における学問の基本的方法であり、ヲコト点図や訓法に、それぞれの仏教宗派や博士(はかせ)家の伝統的個性が反映されている。訓読の文体は、平安時代の平仮名文とは別個の位相言語をなし、中世の和漢混交文体の成立や、近代文章の文体の成立にも大きな影響を与えた。

[白藤幸]

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百科事典マイペディア 「訓読」の意味・わかりやすい解説

訓読【くんどく】

(1)漢字の訓読。漢字を和訓で読むこと。(2)漢文の訓読。漢文を日本語の文法に則して,原文の語序を転倒しながら読むこと。たとえば〈登彼山〉を〈カノヤマニノボル〉のように読む。訓読は本来漢文の翻訳であるが,直訳の極端なものである。この読み方を原文に注記したものを訓点という。古く漢文は,文化輸入の源泉として尊重されたから,訓読によって生じた多くの直訳的語法や語彙(ごい)が日本語の中に重い地位を占め,さらに日本語の他の分野にも大きな影響を及ぼした。
→関連項目置字をこと点返り点

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「訓読」の意味・わかりやすい解説

訓読
くんどく

漢字の訓読みの意味でも用いられるが,漢文を日本語の語法に従って訳読することもいう。後者の場合,個々の漢字は音読みをするものもあり,訓読みをするものもある。そのようにして読下した文を (漢文) 訓読文といい,そこに用いられる言語を (漢文) 訓読語という。また訓読を示すために原漢文につけた文字・符号の類を訓点といい,それによって表わされる言語を訓点語という。漢字・漢文の伝来時は音読だけであったのが,次第に相当する意味の日本語が漢字と結びついて訓が成立し,文全体を日本語の文法に従って読下すようになって訓読が始ったとみられる。

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