尚賢思想(読み)しょうけんしそう

改訂新版 世界大百科事典 「尚賢思想」の意味・わかりやすい解説

尚賢思想 (しょうけんしそう)

才能ある者を尊崇するという主張であるが,中国ではこれが官吏登用において強く唱えられた。つまり,世襲制に対して才能に応じて人材を抜擢せよとの考え方である。この思想を最も強く主張するのは《墨子》と《公羊伝(くようでん)》である。《墨子》は主に兄弟・父子・君長の兼愛を説くが,これは世襲制,氏族制からの弱者の解放を根底としている。同じ基盤から庶民・奴隷にも才能に応じて官吏登用の門戸が開かれるべきとの主張がでてくるのである。一方《公羊伝》は,〈賢者の為に諱(い)む〉とくり返し述べ,春秋期の乱世は,禄位の世襲にその原因があるとし,そこから才能ある者の尊崇,任用を主張するのである。尚賢思想は漢代以降,世襲制,門閥制と常に緊張関係をもちつつ政治の上でも援用される。漢代の〈賢良方正〉をはじめとする人材登用法,および隋・唐以降の科挙制は,この尚賢思想の反映にほかならない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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