末灯鈔(読み)まっとうしょう

改訂新版 世界大百科事典 「末灯鈔」の意味・わかりやすい解説

末灯鈔 (まっとうしょう)

親鸞書簡集。親鸞は東国20年の布教を中止して1234年(文暦1)ころ京都に帰った。以後はおもに書簡を交換して門弟との連絡を密にした。親鸞の曾孫覚如の次男従覚(慈俊)が1333年(元弘3)4月,諸国に散在する親鸞の書簡や短編の法語22通を集め,2巻に整理したのが本書である。親鸞の書簡集としては,早くは門弟の常陸国飯沼の善性が編集した《御消息集》があり,その後,下野国高田の顕智は《五巻書》を編し,下総国の横曾根門徒は《血脈文集》を作り,なお編者未詳の《親鸞聖人御消息集》(愛知県妙源寺所蔵)があった。しかし,いずれも特定の門徒や特殊な問題についての書簡集であった。本書は最も後に編集されたが,所収の通数が多く各種の問題を含み,親鸞書簡の全容を知るものとして広く流布した。初本は1336年(延元1・建武3)兵火に焼けたので,従覚は2年後に転写本から再度編集したという。
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