日本大百科全書(ニッポニカ) 「熊谷恒子」の意味・わかりやすい解説
熊谷恒子
くまがいつねこ
(1893―1986)
女流書家。京都生まれ。祖父は詩名・書名ともに高く、太政官(だじょうかん)吏官を務めた江馬天江(てんこう)(1825―1901)。幼少より書をよくし、のちに岡山高蔭(たかかげ)(1866―1945)に師事して漢字を学び、仮名は平安朝の古筆を独習した。30代で泰東書道展最高賞を受け、のち芸術協会展出品の『枕草子(まくらのそうし)』が帝室博物館買上げとなり、1982年(昭和57)には卒寿記念展出品の『万葉集和歌』1幅が東京国立博物館に収蔵される。57年より日展の審査員・評議員などを歴任。平安朝の伝統的な書法を体得して、流麗高雅な響きをたたえた独自の仮名の書境を築き、他の追随を許さぬ存在となった。
[古谷 稔]