熊野筆(読み)くまのふで

事典 日本の地域ブランド・名産品 「熊野筆」の解説

熊野筆[文房具]
くまのふで

中国地方、広島県の地域ブランド。
安芸郡熊野町で製作されている。江戸時代末期、山間部に位置する芸州(現・広島県)の熊野では、農業だけでは生活を支えきれない農民が多かった。農民たちは農閉期に紀州(現・和歌山県)の熊野地方や大和(現・奈良県)の吉野地方へ出稼ぎに行き、帰郷する際にそれらの地方で仕入れた筆・墨の行商をおこなって生計を立てていた。このことから熊野と筆の関わりが生まれた。その後、江戸時代後期には広島藩主浅野家の御用筆師に筆づくりの指導をうけ、その技法が伝えられて熊野筆の製造が始まった。昭和30年代になると、画筆化粧筆も生産されるようになった。現在では、毛筆・画筆・化粧筆のいずれにおいても国内生産量の80%以上を占めている。1975(昭和50)年5月、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

デジタル大辞泉プラス 「熊野筆」の解説

熊野筆

広島県安芸郡熊野町で生産される工芸品。獣毛で作られた毛筆、画筆、化粧筆など。国指定伝統的工芸品。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の熊野筆の言及

【熊野[町]】より

…耕地が乏しく,零細農家が多いため古くから農閑期には出稼ぎが盛んで,帰郷するとき奈良地方の筆や墨を仕入れて行商する者が多かった。伝統産業の熊野筆はそれを背景に1846年(弘化3)ころ広島藩の御用筆司や摂津有馬から製筆法を学んだのがはじまりと伝えられている。明治以降,学校教育の普及で筆の需要が増大し,現在では約100社の事業所があり,全国生産に占める割合は毛筆80%,画筆70%,工業用や化粧用のはけ70%に達し,海外へも輸出されている。…

※「熊野筆」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android