蟠螭文(読み)ばんちもん(英語表記)pán chī wén

改訂新版 世界大百科事典 「蟠螭文」の意味・わかりやすい解説

蟠螭文 (ばんちもん)
pán chī wén

中国古代の青銅器に飾られた文様一つ。数匹の竜の形をした獣文が,その細い蛇のような胴体をくねらせて,からみ合わさった図案で,西周時代後期にあらわれ,春秋戦国時代に盛行した。この文様の一つは,饕餮文(とうてつもん)から発展した夔竜文(きりゆうもん)の側面形から頭を反転させ,尾を巻き込み,胴部からS字形に屈曲し,連続して並び複雑にからみ合うもので,口から舌を出しているものもある。もう一つは双胴螭竜文が,頭の方向を反対にした隣の竜文と身をからみ合わせ,その胴の一部を口でくわえた形をしている。この竜はいずれも角がはっきりしないので,若い竜という意味で螭の名をつけているが,虺竜(きりゆう)や螭竜の区別はつけにくい。この文様がやがて,玉璧にみられる穀粒文や,秦・漢時代の各種容器にみられる雲気文に変わっていったと考えられる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蟠螭文」の意味・わかりやすい解説

蟠螭文
ばんちもん
pan-chi-wen

中国,戦国時代銅器銅鏡に用いられた文様。蟠は「わだかまる」,螭(みずち)は角のない若い竜の意で,互いにからみ合うさまを表す。夔竜文の一つの変形文様。

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