β構造(読み)ベータコウゾウ

化学辞典 第2版 「β構造」の解説

β構造
ベータコウゾウ
β structure

タンパク質分子のポリペプチド鎖がとる基本的な構造.折りたたんだ板(pleated sheet)上に何本かのポリペプチド鎖が伸び,ペプチド結合カルボニル基とイミノ基間の水素結合がそれらの鎖間に形成されている構造.1951年,L. Pauling(ポーリング)らにより,絹フィブロイン,β-ケラチンのX線回折図を説明するために提唱され,リゾチームなどのタンパク質分子中に存在することが,X線回折により確認されている.β構造には,ペプチド鎖が平行に並んだ平行型(parallel pleated sheet)構造と,ペプチド鎖が逆平行に並んだ逆平行型(antiparallel pleated sheet)構造とがあり,前者羊毛,β-ケラチン,後者は絹フィブロインに存在する.これらはペプチド鎖の方向と繊維軸の方向が一致しており,まとめてparallel-β構造とよばれる.これに対して,ペプチド鎖の方向と繊維軸の方向とが直交している場合があり,cross-β構造と称され,ポリ-O-アセチル-L-セリン繊維,リゾチーム分子中に存在する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「β構造」の解説

β構造

 βシート構造ともいう.タンパク質の二次構造でポリペプチド鎖が平行(パラレルβ構造)もしくは逆平行(クロスβ構造)の形で,水素結合で結合して,紙をぎざぎざに折りたたんだような構造をとっているもの.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のβ構造の言及

【タンパク質(蛋白質)】より

…(φ,ψ)の内部回転角の組には,いくつかのエネルギーの低い部分があり(図2-c),これが連続したアミノ酸残基に実現されるとき,二次構造として認識される。α‐らせん(図3-a),β‐構造(図3-b),ポリ‐L‐プロリンII型らせん(図3-c)が二次構造の例である。α‐らせんはそれ自身の中で,β‐構造は他のβ‐構造との間で水素結合を作り,構造を安定化している。…

※「β構造」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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