羊毛(読み)ヨウモウ(その他表記)wool

翻訳|wool

デジタル大辞泉 「羊毛」の意味・読み・例文・類語

よう‐もう〔ヤウ‐〕【羊毛】

羊からとった毛。柔軟で保温性・吸湿性に富み、毛糸・毛織物の原料とする。ウール。
[類語]純毛ウールカシミアモヘア木綿綿めん純綿真綿まわたコットンジュート本絹正絹しょうけん人造絹糸シルク化学繊維

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精選版 日本国語大辞典 「羊毛」の意味・読み・例文・類語

よう‐もうヤウ‥【羊毛】

  1. 〘 名詞 〙 羊や山羊(やぎ)などからとった毛。毛糸・毛織物の原料とする。
    1. [初出の実例]「氈には皆羊毛をするげなぞ」(出典:史記抄(1477)一九)
    2. [その他の文献]〔大唐西域記‐二〕

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改訂新版 世界大百科事典 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛 (ようもう)
wool

羊毛はメンヨウから切り取った毛で,ウールともいい,人間が利用する動物の毛の大部分を占める。動物の毛としてはヘア(獣毛)と呼ばれるラクダ毛,カシミア毛,モヘア(アンゴラヤギ毛),アンゴラウサギ毛,アルパカ毛も繊維として使われる。ヒツジは有史以前から中央アジア地方で飼育されたらしい。前3000年にはバビロニア人がヒツジを飼い,毛織物を着ていたという。しだいに東南アジア,ヨーロッパへ伝えられた。ヒツジは初め肉を食用として利用していたが,毛皮を防寒に用いるようになり,のちに毛を切り取って糸を紡ぎ,糸から織物を作るようになった。

家畜ヒツジの最も著しい特性は,メリノーMerinoあるいは他の毛用ヒツジに共通の厚い被毛である。オーストラリアで飼育されるヒツジ1億4000万頭の約7割以上を占めるメリノー種は優れた羊毛を産するが,体質が比較的弱いため,各地方に合うように,また産毛量が多くなるように改良が行われている。このためニュージーランドでは総数7000万頭のうち,メリノー種は100万頭とごく少なく,雑種のロムニーマーシュ種Romney Marshが圧倒的に多い(1983/84年度)。
ヒツジ

ヒツジの冬毛は春季温暖な時期に自動クリッパーで人手をかけて剪毛(せんもう)される。羊毛は腹部で開いた1枚の毛皮(フリースと呼ばれる)のように切り取られるが,オーストラリアメリノーの毛量は汚毛量(脂付羊毛量)でだいたい2.7~3.1kgである(図1)。フリースは1枚ごとに折り畳んで,40~50頭分(約136~227kg)が袋詰され出荷される。汚毛(原毛)は脂,汗,土砂,汚物などがついており,セッケンで洗ってきれいにすると重量が汚毛量のふつう約半分,よく管理されたオーストラリアで63~65%になった洗上羊毛が得られる。世界の羊毛生産高は162万t(1982)で,全繊維生産高に占める割合は5.5%である。

産地名をつけて呼ぶ分類もあるが,多く用いられているのは,毛の粗さの程度によりメリノー羊毛雑種羊毛,カーペット羊毛と呼ぶ分類である。メリノー羊毛は,メリノー種のヒツジからとれた細く,柔らかく,巻縮(けんしゆく)性に優れた最高の品質の羊毛である。メリノー種は各国で品種改良されており,オーストラリア,南アフリカ,旧ソ連(ロシア,カザフスタンなど),アメリカ,ニュージーランドでとれるが,品質はオーストラリアのものが最上で,南アフリカ産はこれに次ぐが,やや強力が弱い。雑種メンヨウからとった雑種羊毛は,比較的太く,巻縮性や縮充(縮絨(しゆくじゆう))性も劣るが,弾力性は大きいので編物用にはむしろメリノー種より適する。ニュージーランド,イギリス,オーストラリア,南アメリカ,アメリカで生産される。カーペット羊毛は太くて巻縮は少なく,縮充性に劣る羊毛で,中国,インド,トルコ,旧ソ連,パキスタン,南アメリカなどでとれ,織物には適さないのでカーペットなどに使われる。全羊毛のうち約2割を占める。

羊毛は,ヒツジの皮膚の中層にある毛囊からリンパ液が体内圧力によって押し出されて固まるとき,中心組織,中層組織ができ,いちばん外側にスケールまたはセレーションと呼ばれる鱗片(りんぺん)層が形成されてできる(図2)。毛表面は一定方向を向いたスケールでおおわれている。また,1本1本の繊維はクリンプスcrimps(巻縮)ができて波状に縮れている。羊毛はこの二つの構造にその性質の多くが由来している。

(1)太さと長さ 繊維は細くて長いものほど高級の糸になる。オーストラリアメリノー羊毛の太さは直径0.018~0.023mmで,雑種羊毛は0.024~0.042mmくらいである。長さは前者が5~10cm,後者は7~20cmくらいである。ヒツジの身体の部分では,肩の部分は細くて長い最上質の毛で,脇腹,背中,くび,腹,しりの順で質が悪くなる。太さは羊毛の品質を決定する重要な因子の一つであるが,その太さを正確な寸法で測って取引するのは難しいので,何番手くらいの梳毛(そもう)糸が作れるかで羊毛の太さを表す。オーストラリアメリノーの羊毛で番手60~70’sと表されれば,60~70番手の毛糸に作れる羊毛のことをさす。したがって,糸の番手ほど厳密なものではない。毛糸の番手は恒重式で表され,番手数の多いものほど細い糸である。日本で採用しているメートル式では梳毛糸,紡毛糸ともに重さ1kgで何kmの長さがあるかを示す数が番手数になる。

(2)スケール(鱗片) 羊毛を電子顕微鏡で見ると(図3),表面がうろこ(スケール)でおおわれているのがわかる。毛の細いものほどスケールの数も多く,メリノー羊毛の細い毛で長さ1cm当り1000~1200個のスケールがあり,雑種のサウスダウン種羊毛で650内外,リンカン種で500内外のスケールがある。細い羊毛ほど相対的に小さなスケールでおおわれている。スケールは撥水(はつすい)性(水滴をはじく)をもっていて,しかも湿気は通す特性を有する。このため常温の空気中で16%の水分を吸い,羊毛の吸湿性は高い。アンゴラウサギ毛やラクダ毛のようなヘア(獣毛)にもスケールはある。図3-dにみられるように,アンゴラウサギ毛のスケールは羊毛と少し違い先がとがっている。モヘアはスケールがほとんどみられない。羊毛を重ね合わせて熱と圧力をかけてフェルトを作ったり,セッケン水と熱と圧力をかけてもむと,毛がからみ合って縮小した厚さの増した毛織物を作ったりできるのは,逆方向に並んだスケールがかみ合うことと,次に述べるクリンプスが元の縮んだ状態に戻ろうとする力による繊維のからみ合いによる。この毛がからみ合って密着する性質を縮充という。ウールの防縮加工は,化学的処理でスケールの角をとって丸くするか,または樹脂加工でスケールを包んでしまうことによる。また,毛糸くずなどから再生したウールには,スケールが欠けてしまっていることがある。

(3)巻縮(クリンプス) 羊毛はジグザグ形に巻縮している(図4)。平たい波形のものから深くて細かい波形のものまでいろいろの巻縮をとっているが,一般に,細い羊毛ほどクリンプスの数が多くかつ深い。たとえば,直径16μmのオーストラリアメリノー羊毛で1cm当り9.4~11.8個のクリンプスがあり,39μmのリンカン種で1.1~1.9個のクリンプスがあるという測定結果が知られている。また,スケールの数が多い羊毛ほど巻縮も多い。羊毛の屈曲は紡績のとき,繊維どうしのからみ合いを助長するので,波数が多くかつ正常波形のものほど上等の毛織物に製造される。このクリンプスは湿潤状態で引き伸ばされると伸びてしまうが,しばらくすると元の状態に戻る特性をもつ。純毛のズボンのひざが伸びてもハンガーにかけておくと元に戻るのはこの性質による。

(4)強伸度 羊毛は中心組織,中層組織,鱗片層の三つの組織から成り,また多細胞からできているため,柔軟で弾力性に富む。引張強さは1.0~1.7gf/デニールで生糸のそれ(3.0~4.0gf/デニール)より小さいが,これは組織が多細胞から成るためである。伸度は25~35%。乾湿強度比は70~90%である。ヤング率は260~650kgf/mm2と比較的柔らかい。2%の伸びに対しては99%回復し,10%の伸びならば74%回復する。時間がたつと徐々に回復するので,永久変形を残しにくい。

(5)熱に対する性質 羊毛を蒸気で加熱すると,135℃で過収縮(不可逆的収縮)が現れる。一方,伸長状態において長時間蒸気で加熱すると,20%以上も伸長したままになる。羊毛内のシスチンなどの架橋結合が切れたり,あるいは分子内に新しい結合ができたために起こる現象である。258℃で熱分解が始まり,溶融点は存在しない。タンパク質として窒素を15%くらい含有するので,比較的燃えにくい。

(6)化学的性質 羊毛はタンパク質繊維である。タンパク質繊維は約20種のα-アミノ酸を構成成分とする天然高分子で,化学合成はできない。ケラチンと呼ばれる種々のタンパク質の混合物から成る。羊毛は濃アルカリや熱い希アルカリに侵されるが,それは,次のようにアミノ酸を互いに結合させているペプチド結合-CONH-がアルカリで加水分解されるからである。

Wはタンパク質の直鎖状高分子部分を表す。また,羊毛は5%の苛性ソーダ水溶液に溶解するが,酸には溶解しない。また,希硫酸や希塩酸中では酸を吸収して塩を形成する。このとき羊毛の強度の低下が起こる。

80℃の水はタンパク質のシスチン結合を侵しはじめ,100℃以上の水はタンパク質を加水分解する。シスチン結合は次のように切れる。

 W-CH2SSCH2-W+H2O─→W-CH2SH+W-CH2SOH

タンパク質分子間を結びつけているシスチン結合の切断は,たとえば過収縮をひき起こす。

洗上羊毛から毛糸を作るには梳毛紡績と紡毛紡績による。5cm以上の比較的長い羊毛には梳毛紡績が適用され梳毛糸(ウーステッドヤーン)が作られるが,これは繊維をコーマによって引きそろえ,撚り(より)をかけて表面をなめらかにして作った糸である。この梳毛糸を織機にかけて織ったものが,モスリン,サージ,ポーラー,ギャバジンのように表面が毛羽立っていない織物である。紡毛紡績によって作られる紡毛糸(ウールンヤーン)は比較的短い羊毛のほかに,コーマで除かれた短い繊維(ノイルという),毛糸のくずや再生羊毛を原料とすることもあり,梳毛のように繊維方向が完全に引きそろえられていないので毛羽立ちの多い糸である。紡毛糸を使った織物は厚地織が多く織目が見えにくいか,起毛のため織目がほとんど見えない。

(1)カシミア毛 インドにすむカシミアヤギの剛毛の間に密生する軟毛。春季に脱落するものを集めるか,剛毛といっしょに切り取ったものを分離して採取する。この毛は強力は弱いが,柔らかくて手触りのなめらかなセーター,オーバー地,カシミアシャツなどに作られる。(2)モヘア おもにトルコや南アフリカ共和国にいるアンゴラヤギの毛。絹のような強い光沢があり,感触もよい。長さ10~30cm,太さ14~90μm。スケールがかすかにあるくらいなので,可紡性に乏しい。特殊な紡績法で糸に作られる。(3)アンゴラウサギ毛 フランスが主産地のアンゴラウサギの毛で,純白で軽くて柔らかい。婦人セーターなど高級毛織物などに用いられる。1匹の年間収量は400gと少ない。太さ10~30μm。(4)ラクダ毛 中央アジアや中国にすむアジア系フタコブラクダにはえている剛毛と柔毛のうち,柔毛のみを分離したもの。長さ10cm,太さ20μmくらい。褐色を帯びており脱色できないので,その色のままか濃色に染めて,高級服地,シャツ,オーバー地などに用いられる。(5)アルパカ アンデス山脈にすむアルパカヤギの毛。手触りがよく,美しい艶で腰が強い繊維。摩擦に強く,裏地や服地に使われる。
執筆者:

ヨーロッパの羊毛取引が毛織物工業との関連で盛んになるのは中世においてであり,とりわけイギリスから当時の二大毛織物生産地であるフランドルと北イタリアへの羊毛輸出が重要であった。中世のイギリスは後進的な原料=羊毛産出国であり,その羊毛生産は領主の直営地,修道院,多様な農民によって広く国内各地で営まれていた。当初イギリス商人の資本力は弱く,輸出にあたったのは巨大な資本をもったフランドル商人やイタリア商人であったが,14世紀に入るとステープル組合に組織されたイギリス商人が台頭し,他の商人を駆逐していった。羊毛輸出に伴う関税収入が国家の重要な財源だったので,羊毛取引市場が指定(ステープル)され,ステープル商人による独占が形成されたのである。しかし,15,16世紀にイギリスの毛織物生産が増大すると,羊毛輸出は減少していき,16世紀半ばまでにはわずかになった。このころには,羊毛は国内取引において重要な位置を占め,ステープル商人に代わって羊毛仲買人が活躍するようになる。毛織物生産者=織元clothierのうち,富裕な者は仲買人の仲介を要さず,みずから羊毛商人として機能しえたのであるが,多数の貧しい織元は羊毛仲買人からの原料供給に依存しなければならなかった。しかもその際,貧しい織元にとって原料である羊毛をみずからの資力で調達しうるか否かは,自己計算で自立した生産を営めるか否かの重要な問題であり,それが不可能な場合にはいわゆる問屋制支配に組み込まれていった。

 イギリス羊毛には2種類が区別される。一つは短毛で,ウェールズやスコットランド,ヨークシャーの荒地,南部の白亜土壌地帯などの丘陵地ややせ地で飼育される小型のヒツジから得られる。これは刷毛によって紡毛糸にされ,厚手で毳(むくげ)のある紡毛織物(ウールンwoollen)にされた。もう一つは長毛で,肥沃な低地地帯の草地や湿地で飼育される大型のヒツジから得られる。これは梳毛によって梳毛糸にされ,薄手で表面のなめらかな梳毛織物(ウーステッドworsted)にされた。イギリスでは中世以来紡毛織物の生産が中心であったが,17世紀以後は梳毛織物の生産に中心を移していった。第1次エンクロージャーは,長毛用のヒツジの飼育を盛んにし,梳毛工業の発展を助長した。このためイギリスでは毛織物工業の発展とともに短毛の不足が生じ,アイルランドやとりわけスペインから輸入を仰ぐようになった。かつて後進的な羊毛輸出国だったイギリスは,17世紀には羊毛輸入国へと転換したのである。

 イギリスへの最も重要な羊毛輸出国となったスペインでは,牧羊業は中世以来北部の山間部と南部の平野部との間の季節ごとの移動という形をとり,メスタと呼ばれる移動牧羊業者の組合を発達させた点に特徴がある。1273年に成立したメスタは,ヒツジの移動路や牧草地の確保,迷羊の処置などについて特権を有し,また国家財政の基盤として重要であった。16世紀の前半にメスタの発達は頂点を迎え,数百万頭の牧羊移動を行い,羊毛はおもにフランドル方面へ輸出された。しかしスペイン国内の政争やフランドル市場の混乱のため,16世紀末にはメスタは打撃をうけ衰退に陥っている。17,18世紀にはイギリスがスペイン羊毛を輸入し,とりわけその上質なメリノー種の短毛が,当時の最高級毛織物である〈スペイン織〉の原料とされた。

 18世紀後半からイギリスで第2次エンクロージャーが進行し,ノーフォーク農法による四輪作制が普及すると,ヒツジの大型化と長毛生産がますます進み,イギリスの短毛輸入依存が強まった。19世紀に入るとスペインのほかドイツもイギリスの羊毛輸入先として重要となり,1820年代にはオーストラリアからの輸入も始まっている。これらの国はいずれもメリノー種の短毛生産国である。イギリス産業革命期の毛織物工業は,その原料を,梳毛工業は国内産の長毛に,紡毛工業はおもにスペイン,ドイツから輸入された短毛によったのである。
執筆者:

オーストラリアの羊毛産業は,南アフリカ経由で入ったメリノー種のヒツジから始まった。メリノー種の原産地スペインではヒツジの国外輸出は禁止されていた。しかし,1789年にスペイン王室からオランダ王室へ何頭かのメリノー種が贈られた。ところがメリノー種はオランダの気候に合わず,雄2頭と雌4頭が,当時オランダの植民地であった南アフリカのケープ植民地に送られ,飼育された。ナポレオン戦争で95年にイギリス軍がケープ植民地を占領したとき,メリノー種のヒツジも戦利品として,当時の新しい植民地オーストラリアへ食糧用として送られた。35頭いたヒツジは長い船旅のため97年にニュー・サウス・ウェールズに着いたときには13頭に減っていた。イギリスの将校であったマッカーサーJohn Macarthur(1767-1834)はそのうち雄3頭と雌5頭を買い取り,飼育を始めた。これがオーストラリアにおける羊毛産業の始まりである。その後1807年にはロンドンのギャラウェー・コーヒー・ハウスで契約販売が,21年にはオークションが始まり,イギリス以外の国も参加できるように,43年からシドニーでもオークションが行われるようになった。生産量も1823年の40万ポンドが,40年には860万ポンドとなった。インドからイギリスへ茶を運んだ〈ティー・クリッパー〉が,オーストラリアから羊毛を運ぶ〈ウール・クリッパー〉になったのもこのころである。現在オーストラリアではペピン・メリノーやサウス・オーストラリアン・メリノーなどメリノー種の改良種が西部と東部の少し内陸に入った小雨地帯で飼育されている。

 ニュージーランドには1814年にオーストラリアからメリノー種が持ち込まれ,34年には105頭のメリノー種がオーストラリアから輸入された。しかし湿度の高いニュージーランドの気候にメリノー種は合わず,80年ころからイギリス種をベースとした毛肉兼用種が飼われるようになり,82年にはイギリス向けの冷凍肉船が運航している。

 世界の羊毛生産量(1995)は259万tで,うちオーストラリア77万t,ニュージーランド28万t,中国26万t,ロシア9.4万t,アルゼンチン9.2万t,カザフスタン9万t,ウルグアイ8.5万t,イギリス6.7万t,南アフリカ共和国6.1万tなどである。一方,貿易額は約53億米ドルで,うちオーストラリアが24億ドル,ニュージーランド7億と,この2ヵ国で約60%を占めている(1994年度)。
毛織物
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百科事典マイペディア 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛【ようもう】

ヒツジの体毛。ウール。紡織繊維としてはメリノー種のものが最もすぐれ,雑種毛(メリノー種以外のもの)は編物用,カーペット羊毛(下級羊毛および,中国,インド,トルコ,旧ソ連などの在来種のもの)はカーペット用に適する。刈取り(北半球では4〜9月,南半球では9月〜翌年2月,ふつう年1回)後,ソーダ灰と石鹸の混合溶液で約40℃で処理して可溶性不純物および脂肪質を除去,次いで亜硫酸ガス,亜硫酸水素ナトリウム,過酸化水素水などで漂白する。羊毛繊維は髄質部とそのまわりを囲む皮質部,さらにその表面をおおう鱗片状組織からなり,主成分はタンパク質のケラチン。他の繊維に比べ巻縮(クリンプス)が多く縮充性,弾性に富み,吸水性,保温力が大きく,染色性が良好。酸には比較的強いがアルカリには弱い。→毛糸毛織物
→関連項目梳毛梳毛紡績羊毛工業

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛
ようもう
wool

ヒツジから刈り取った毛の繊維。ヨーロッパでは非常に古くから羊毛を繊維とする習慣があったが、わが国ではヒツジが輸入されたのは比較的新しい。ヒツジは通常年1回、春の温暖になるころに毛を刈り取る。現在は、電気バリカンによって腹部より左右に切り開き、順次はぎ取っていき、一枚の毛皮のような形(フリース)にするのが習慣である。一頭のヒツジから収穫できる羊毛量は、オーストラリアンメリノー種で約3キログラムであり、刈り取ったままの羊毛(原毛)は脂、糞尿(ふんにょう)、土砂などが付着しており、これを洗ってきれいにすると目方は約半分となる。またフリースのなかでも部位によって毛の長さ、細さ、光沢などの差がある。肩の部分は、細くて長く質も柔らかで、もっとも良質の毛を産出する。

 羊毛繊維に特有な性質として、ジグザグ形に捲縮(けんしゅく)した形状(クリンプスという)と、繊維表面にうろこ状に無数の鱗片(りんぺん)(スケールという)がある。細い羊毛ほどクリンプスの数は増え、スケール数も多く、配列も規則的となる傾向がある。一方このスケールは縮絨(しゅくじゅう)作用の原因となり、とくにせっけん水と熱と圧力の下では、羊毛繊維が互いに絡み合って硬いかたまりとなる(フェルト化)。一般にフェルト化がおこると実用には不都合なため、塩素処理をしてスケールをすこし破壊した羊毛製品が多い。

[並木 覚]

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普及版 字通 「羊毛」の読み・字形・画数・意味

【羊毛】ようもう(やうまう)

羊の毛。〔文房四譜、筆譜上二〕今江南の民は、皆山羊毛を以(もち)ふ。蜀中にも、亦た羊毛を用ひて筆と爲すり。亦た毫(とがう)に下らざるなり。

字通「羊」の項目を見る

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化学辞典 第2版 「羊毛」の解説

羊毛
ヨウモウ
wool

羊から得られる獣毛繊維.ウールとヘアーに分けられる.ウールは細くて柔らかく,比較的短い.ヘアーは太くて長く,硬く,毛髄をもつ.これらはケラチンからなっており,品種,太さにより若干変動するが,羊毛ケラチンの加水分解物は約20種類のα-アミノ酸からなる.羊毛は断面が円形に近く,その高次組織は多数の紡錘状細胞と細胞間物質,さらにこれを取りまくりん片状細胞(クチクラ,うろこ状でスケールともいう)からなっており,毛髄は普通の羊毛では消滅している.細いウールはおもに衣料用に使用され,繊維のなかでは最高級である.ヘアーはカーペットなどに用いる.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛
ようもう

「ウール」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の羊毛の言及

【毛織物】より

…羊毛その他の獣毛を原料とする織物。動物の体毛のうち空洞のないものをヘアhair,空洞のある柔らかいものをウールwoolと呼び,羊毛を主体とするウールを糸として織ったものをいう。毛糸には梳毛糸(そもうし)(長さが平均して5cm以上の良質羊毛から短い繊維を取り除き,平行にそろえてひきのばし,撚りをかけて表面をなめらかにしたもの)と紡毛糸(ぼうもうし)(短い羊毛や梳毛の工程ですき落とされたノイルと称する短いくず毛などを混ぜ合わせたもの)があり,それぞれ織られたものを梳毛織物(ウーステッドworsted),紡毛織物(ウールンwoolen)と呼ぶ。…

【糸】より

…綿,羊毛などの比較的短い繊維をそろえて撚り(より)をかけた紡績糸(スパン糸spun yarn),および絹,ナイロンなどの長い繊維を集束して撚りをかけた繊条糸(フィラメント糸filament yarn)の総称。繊維をそろえて撚りをかけたものには,綱,縄,紐などがあるが,一般に糸は最も細いものをいい,また長い繊条,たとえばクモの糸,釣糸なども糸と呼ばれている。…

【豪毛競売】より

…毛織物の素原料である羊毛の世界最大の産出国はオーストラリア(豪州)である。そのオーストラリアの各羊毛集散地市場で競売方式で決まる豪毛競売相場は,羊毛取引の世界的な指標となっている。…

【繊維】より

…これらはおもにセルロースからできている。生産されている動物繊維は大部分が羊毛である。羊毛の世界生産高は年産約160万tである。…

【ヒツジ(羊)】より

…肉用種,毛用種,兼用種など,飼育の目的によって区分されたり,細毛種,粗毛種,長毛種,短毛種などと毛の品質によって区分されたりするが,これらを総合的に判断して次の9群にわけることができる。(1)メリノー系種(メリノー種) スペインにローマ人がもちこんだヒツジが源となり成立したスパニッシュ・メリノー種Spanish Merinoは細美な羊毛を生産する毛用種として世界各地へ広められ,オーストラリアではオーストラリアン・メリノー種Australian Merino(イラスト),フランスではランブイエ・メリノー種Rambouillet Merino,ドイツではサクソニー・メリノー種Saxony Merino,アメリカでデレーン・メリノー種Delaine Merinoなど一連のメリノー系種が成立した。いずれも乾燥した土地に適し,毛質は優れているが,産肉性は劣る。…

※「羊毛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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