羊毛(読み)ようもう(英語表記)wool

精選版 日本国語大辞典 「羊毛」の意味・読み・例文・類語

よう‐もう ヤウ‥【羊毛】

〘名〙 羊や山羊(やぎ)などからとった毛。毛糸毛織物原料とする。
史記抄(1477)一九「氈には皆羊毛をするげなぞ」 〔大唐西域記‐二〕

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デジタル大辞泉 「羊毛」の意味・読み・例文・類語

よう‐もう〔ヤウ‐〕【羊毛】

羊からとった毛。柔軟で保温性・吸湿性に富み、毛糸・毛織物の原料とする。ウール
[類語]純毛ウールカシミアモヘア木綿綿めん純綿真綿まわたコットンジュート本絹正絹しょうけん人造絹糸シルク化学繊維

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百科事典マイペディア 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛【ようもう】

ヒツジの体毛。ウール。紡織繊維としてはメリノー種のものが最もすぐれ,雑種毛(メリノー種以外のもの)は編物用,カーペット羊毛(下級羊毛および,中国,インド,トルコ,旧ソ連などの在来種のもの)はカーペット用に適する。刈取り(北半球では4〜9月,南半球では9月〜翌年2月,ふつう年1回)後,ソーダ灰石鹸の混合溶液で約40℃で処理して可溶性不純物および脂肪質を除去,次いで亜硫酸ガス亜硫酸水素ナトリウム,過酸化水素水などで漂白する。羊毛繊維は髄質部とそのまわりを囲む皮質部,さらにその表面をおおう鱗片状組織からなり,主成分はタンパク質のケラチン。他の繊維に比べ巻縮(クリンプス)が多く縮充性,弾性に富み,吸水性,保温力が大きく,染色性が良好。酸には比較的強いがアルカリには弱い。→毛糸毛織物
→関連項目梳毛梳毛紡績羊毛工業

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛
ようもう
wool

ヒツジから刈り取った毛の繊維。ヨーロッパでは非常に古くから羊毛を繊維とする習慣があったが、わが国ではヒツジが輸入されたのは比較的新しい。ヒツジは通常年1回、春の温暖になるころに毛を刈り取る。現在は、電気バリカンによって腹部より左右に切り開き、順次はぎ取っていき、一枚の毛皮のような形(フリース)にするのが習慣である。一頭のヒツジから収穫できる羊毛量は、オーストラリアンメリノー種で約3キログラムであり、刈り取ったままの羊毛(原毛)は脂、糞尿(ふんにょう)、土砂などが付着しており、これを洗ってきれいにすると目方は約半分となる。またフリースのなかでも部位によって毛の長さ、細さ、光沢などの差がある。肩の部分は、細くて長く質も柔らかで、もっとも良質の毛を産出する。

 羊毛繊維に特有な性質として、ジグザグ形に捲縮(けんしゅく)した形状(クリンプスという)と、繊維表面にうろこ状に無数の鱗片(りんぺん)(スケールという)がある。細い羊毛ほどクリンプスの数は増え、スケール数も多く、配列も規則的となる傾向がある。一方このスケールは縮絨(しゅくじゅう)作用の原因となり、とくにせっけん水と熱と圧力の下では、羊毛繊維が互いに絡み合って硬いかたまりとなる(フェルト化)。一般にフェルト化がおこると実用には不都合なため、塩素処理をしてスケールをすこし破壊した羊毛製品が多い。

[並木 覚]

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普及版 字通 「羊毛」の読み・字形・画数・意味

【羊毛】ようもう(やうまう)

羊の毛。〔文房四譜、筆譜上二〕今江南の民は、皆山羊毛を以(もち)ふ。蜀中にも、亦た羊毛を用ひて筆と爲すり。亦た毫(とがう)に下らざるなり。

字通「羊」の項目を見る

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化学辞典 第2版 「羊毛」の解説

羊毛
ヨウモウ
wool

羊から得られる獣毛繊維.ウールとヘアーに分けられる.ウールは細くて柔らかく,比較的短い.ヘアーは太くて長く,硬く,毛髄をもつ.これらはケラチンからなっており,品種,太さにより若干変動するが,羊毛ケラチンの加水分解物は約20種類のα-アミノ酸からなる.羊毛は断面が円形に近く,その高次組織は多数の紡錘状細胞と細胞間物質,さらにこれを取りまくりん片状細胞(クチクラ,うろこ状でスケールともいう)からなっており,毛髄は普通の羊毛では消滅している.細いウールはおもに衣料用に使用され,繊維のなかでは最高級である.ヘアーはカーペットなどに用いる.

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世界大百科事典 第2版 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

ようもう【羊毛 wool】

羊毛はメンヨウから切り取った毛で,ウールともいい,人間が利用する動物の毛の大部分を占める。動物の毛としてはヘア(獣毛)と呼ばれるラクダ毛,カシミア毛,モヘア(アンゴラヤギ毛),アンゴラウサギ毛,アルパカ毛も繊維として使われる。ヒツジは有史以前から中央アジア地方で飼育されたらしい。前3000年にはバビロニア人がヒツジを飼い,毛織物を着ていたという。しだいに東南アジア,ヨーロッパへ伝えられた。ヒツジは初め肉を食用として利用していたが,毛皮を防寒に用いるようになり,のちに毛を切り取って糸を紡ぎ,糸から織物を作るようになった。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「羊毛」の意味・わかりやすい解説

羊毛
ようもう

ウール」のページをご覧ください。

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世界大百科事典内の羊毛の言及

【毛織物】より

…羊毛その他の獣毛を原料とする織物。動物の体毛のうち空洞のないものをヘアhair,空洞のある柔らかいものをウールwoolと呼び,羊毛を主体とするウールを糸として織ったものをいう。毛糸には梳毛糸(そもうし)(長さが平均して5cm以上の良質羊毛から短い繊維を取り除き,平行にそろえてひきのばし,撚りをかけて表面をなめらかにしたもの)と紡毛糸(ぼうもうし)(短い羊毛や梳毛の工程ですき落とされたノイルと称する短いくず毛などを混ぜ合わせたもの)があり,それぞれ織られたものを梳毛織物(ウーステッドworsted),紡毛織物(ウールンwoolen)と呼ぶ。…

【糸】より

…綿,羊毛などの比較的短い繊維をそろえて撚り(より)をかけた紡績糸(スパン糸spun yarn),および絹,ナイロンなどの長い繊維を集束して撚りをかけた繊条糸(フィラメント糸filament yarn)の総称。繊維をそろえて撚りをかけたものには,綱,縄,紐などがあるが,一般に糸は最も細いものをいい,また長い繊条,たとえばクモの糸,釣糸なども糸と呼ばれている。…

【豪毛競売】より

…毛織物の素原料である羊毛の世界最大の産出国はオーストラリア(豪州)である。そのオーストラリアの各羊毛集散地市場で競売方式で決まる豪毛競売相場は,羊毛取引の世界的な指標となっている。…

【繊維】より

…これらはおもにセルロースからできている。生産されている動物繊維は大部分が羊毛である。羊毛の世界生産高は年産約160万tである。…

【ヒツジ(羊)】より

…肉用種,毛用種,兼用種など,飼育の目的によって区分されたり,細毛種,粗毛種,長毛種,短毛種などと毛の品質によって区分されたりするが,これらを総合的に判断して次の9群にわけることができる。(1)メリノー系種(メリノー種) スペインにローマ人がもちこんだヒツジが源となり成立したスパニッシュ・メリノー種Spanish Merinoは細美な羊毛を生産する毛用種として世界各地へ広められ,オーストラリアではオーストラリアン・メリノー種Australian Merino(イラスト),フランスではランブイエ・メリノー種Rambouillet Merino,ドイツではサクソニー・メリノー種Saxony Merino,アメリカでデレーン・メリノー種Delaine Merinoなど一連のメリノー系種が成立した。いずれも乾燥した土地に適し,毛質は優れているが,産肉性は劣る。…

※「羊毛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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