化学辞典 第2版 「μ硫黄」の解説
μ硫黄
ミューイオウ
μ-sulfur
液体硫黄の同素体の一つ.慣用名.硫黄を融解すると黄色・透明で流動性の液体となり,157 ℃ 以上で褐色になり粘性を増し,200 ℃ 付近で暗褐色,粘度最大となる.250 ℃ 以上では粘性が減り,沸点444.8 ℃ で流動性が戻る.S8 環のS-S結合の開裂でビラジカルができて,これが逐次,ほかの環を攻撃して長い鎖となり,各温度では環といろいろな長さの鎖との平衡が成立する.この鎖は粘度最高の200 ℃ 付近では,5~8×105 個の原子が並んだ長さである.黄色の粘度の低い S8 分子が主として存在する部分がλ硫黄で,暗褐色の粘度の高い長鎖を主成分とするものがμ硫黄である.μ硫黄は徐々にλ硫黄に転移する.融点付近では3.6%,160 ℃ では11%,沸点では40% を占める.λ硫黄を固化したものは二硫化炭素に溶けるが,μ硫黄を固化したものは溶けない.[別用語参照]硫黄
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報