二硫化炭素(読み)ニリュウカタンソ(その他表記)carbon disulfide

デジタル大辞泉 「二硫化炭素」の意味・読み・例文・類語

にりゅうか‐たんそ〔ニリウクワ‐〕【二硫化炭素】

赤熱した炭素硫黄蒸気を反応させて得られる、特異臭のある無色液体。引火しやすく、有毒。硫黄・りん沃素ようそ・油脂・ゴムなどを溶かす。溶媒殺虫剤ビスコースの製造原料などに使用化学式CS2

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精選版 日本国語大辞典 「二硫化炭素」の意味・読み・例文・類語

にりゅうか‐たんそニリウクヮ‥【二硫化炭素】

  1. 〘 名詞 〙 炭素の硫化物。化学式 CS2 無色の液体。保存中分解して黄色不快臭を帯びる。引火性が強く、有毒で、消毒・殺虫作用がある。劇薬。硫黄・燐・沃素・臭素および多くの有機化合物を溶かす。殺虫剤、ビスコース・人絹の製造、ゴムなどの溶剤などに用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「二硫化炭素」の意味・わかりやすい解説

二硫化炭素
にりゅうかたんそ
carbon disulfide

炭素と硫黄(いおう)の化合物。水分や揮発分を除いた木炭と硫黄を850~950℃で反応させる。純粋なものは無色、屈折率の高い液体で、一種の香気をもつが、普通、不純物のため黄色に着色し不快臭をもつ。揮発性、きわめて引火しやすく、点火すれば青色の炎をあげて二酸化炭素と二酸化硫黄などになる。放置すると分解しやすく、光があると促進され、不快臭のある黄色液体になる。きわめて引火しやすく青い炎をあげて燃える。水には溶けにくい。0.174mL/100mL(20℃)。アルコール、エーテルベンゼンなどとはよく混ざる。二硫化炭素は直線形の分子S-C-Sである。蒸気を塩素ガスと熱すると四塩化炭素テトラクロロメタン)が得られる。水と150℃以上に熱すると二酸化炭素と硫化水素に分解する。アルコール中で水酸化アルカリと反応してキサントゲン酸塩をつくる。

  CS2+C2H5OK→C2H5OCSSK
 また、硫化アルカリM12Sとはチオ炭酸塩M12CS3をつくる。硫黄、白リンヨウ素、樟脳(しょうのう)、樹脂、ゴム、油脂などのよい溶媒である。ビスコースレーヨン、四塩化炭素、ゴム加硫促進剤農薬、浮遊選鉱剤(キサントゲン酸塩)の製造に用いるほか、溶剤として用いられる。有毒で中毒症状をおこすことがある。蒸気は空気と混合すると爆発しやすい。

[守永健一・中原勝儼]


二硫化炭素(データノート)
にりゅうかたんそでーたのーと

二硫化炭素
  CS2
 式量  76.1
 融点  -111.6℃
 沸点  46.25℃
 比重  1.2927(測定温度0℃)
 屈折率 (n) 1.6315

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改訂新版 世界大百科事典 「二硫化炭素」の意味・わかりやすい解説

二硫化炭素 (にりゅうかたんそ)
carbon disulfide

化学式CS2で表される化合物。無色の液体であるが,不純物を含むものはいくぶん黄色を呈し,特異な不快臭をもつ。沸点が46.262℃と低く,揮発性のうえに引火燃焼しやすいので,取扱いの際は火気に注意する必要がある。また,非常に有毒でもある。気密な容器に入れて,暗所,室温以下で保存することが望ましい。蒸気は空気と混合すると爆発性の混合気体(爆鳴気)を形成する。水にはわずかに溶け(22℃で0.22g/100g),エチルアルコール,エーテル,ベンゼンとよく混ざる。二硫化炭素の分子は1.56Åの間隔で3原子が直線状に並んだ構造(S=C=S)の無極性分子である。硫黄,ヨウ素,臭素などに対してすぐれた溶媒となる。ゴム,油脂,蠟,樹脂などもよく溶かす。木炭と硫黄から工業的に製造される。

最近は,メタンガスと気化した硫黄を反応させる方法も実用化されている。

 CH4+4S─→CS2+2H2S

二硫化炭素をアルコール性水酸化アルカリと反応させるとキサントゲン酸の塩が生成する。

この反応は通常のアルコールだけでなく,セルロースの水酸基でも起こる。セルロースのキサントゲン酸塩をアルカリ水溶液に溶かしたものはビスコースと呼ばれ,ビスコースレーヨンやセロハンの製造に用いられる。二硫化炭素に常温でアンモニア水を作用させるとチオシアン酸アンモニウムNH4SCNが生成する。アミン(とくに第二アミン)との反応ではジチオカルバミン酸の塩が得られる。

二硫化炭素には,ビスコースレーヨンの製造原料としてのほか,ゴムの加硫促進剤,農薬の製造原料,溶剤など広い用途がある。
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化学辞典 第2版 「二硫化炭素」の解説

二硫化炭素
ニリュウカタンソ
carbon disulfide

CS2(76.14).天然に,石炭や原油にも微量含まれている.工業的には,木炭と硫黄蒸気を過熱するか,触媒の存在下でCH4と硫黄蒸気を反応させて合成する.気体では,S-C-Sの直線形分子.S-C約1.56 Å.固体は正方晶系.密度1.263 g cm-3.融点-111.6 ℃,沸点46.5 ℃.揮発性,引火性,屈折率が大きい.液体は無色で長く放置すると,室温でもしだいに分解して黄色味を帯びる.分解は光で促進される.純粋なものはエーテルのような芳香をもつが,市販品の純度のものは悪臭をもつ.175 ℃ 以上で重合して


の黒色塊となる.水には難溶.エタノール,ベンゼン,エーテル,クロロホルム,四塩化炭素などとは任意の割合でまじる.硫黄,黄リン,ヨウ素,樹脂,ゴムなどを溶かす.アルコール性水酸化アルカリとはキサントゲン酸塩をつくる.

CS2 + C2H5OK → C2H5OCS2K

アミンとはチオカルボン酸をつくる.

CS2 + (C2H5)2NH + NaOH → (C2H5)2NCS2Na

金属硫化物とはチオ炭酸塩をつくる.

CS2 + CaS → CaCS3

これらの例のように,CS2はOR,HS,R2NHとアルカリ溶液で反応してそれぞれROS2,CS32-,R2NCS2をつくる.レーヨン人絹,四塩化炭素,キサントゲン酸塩などの製造用に用いられるほか,溶剤(P,S,Se,I2,油脂,樹脂,ゴムなど),浮遊選鉱用液の製造,農薬や殺虫剤の製造などにも用いられる.有毒.[CAS 75-15-0]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「二硫化炭素」の意味・わかりやすい解説

二硫化炭素
にりゅうかたんそ
carbon disulfide

化学式 CS2 。無色,流動性の液体で,比重 1.29,融点-111℃,沸点 46.3℃。引火性,有毒。純粋のものは香気があるが,通常,含硫黄有機物の混在により黄色を呈し,不快臭がある。空気中で青色の炎をあげて燃え,二酸化硫黄を生じる。硫黄,リン,ゴム,油脂,ショウノウなどの良好な溶媒であり,殺虫剤,四塩化炭素,ビスコースの製造などにも使われる。

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百科事典マイペディア 「二硫化炭素」の意味・わかりやすい解説

二硫化炭素【にりゅうかたんそ】

化学式はCS2。特有臭のある無色の液体。融点−112.0℃,沸点46.262℃。水に微溶,有機溶媒とは任意の割合で混ざる。引火性が強い。溶剤,ビスコース,ゴムの加硫促進剤,農薬の製造原料などに使用。赤熱した炭素に硫黄蒸気を通じてつくる。

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栄養・生化学辞典 「二硫化炭素」の解説

二硫化炭素

 CS2.特異な臭気のある気体で,化学工業の原料になる.

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世界大百科事典(旧版)内の二硫化炭素の言及

【ガス化学】より

… メタンの塩素化反応生成物には,塩化メチルCH3Cl,塩化メチレンCH2Cl2,クロロホルムCHCl3,四塩化炭素CCl4などがあり,溶剤,エーロゾル噴霧剤,合成中間体などとして用いられる。 メタンと硫黄を高温で反応させると二硫化炭素が得られるが,この反応は次の2段階からなる。(化学式)第1工程で生じた硫化水素は,第2工程のクラウス法で硫黄として回収され,第1工程へリサイクルされる。…

※「二硫化炭素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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