日本大百科全書(ニッポニカ) 「アイザメ」の意味・わかりやすい解説
アイザメ
あいざめ / 相鮫
藍鮫
軟骨魚綱ツノザメ目の科や属の総称、またはその1種の名称。アイザメ科Centrophoridae(英名gulper sharks)は2基の背びれの前にそれぞれ1本の強い棘(とげ)を有すること、尾びれの先端付近に欠刻(切れ込み)があることなどが特徴で、アイザメ属Centrophorusとヘラツノザメ属Deaniaの2属からなる。アイザメ属は胸びれの内角部が角張るか、後方に伸長するのが特徴で12種、ヘラツノザメ属は吻部(ふんぶ)がへら状に扁平(へんぺい)で長いことが特徴で4種からなる。しかし、両属ともに種レベルの分類に混乱がみられる。
日本近海のアイザメ属には、アイザメC. atromarginatus、タロウザメC. granulosus、オキナワヤジリザメC. moluccensis、モミジザメC. squamosus、ゲンロクザメC. tessellatusの5種が知られている。このうちアイザメは、関東地方以南の太平洋沿岸、台湾、インドネシアの海域、インド洋などに分布する。
アイザメ属の生殖方法は卵黄依存型の胎生で、1~数尾の子を産む。いずれも深海性で、延縄(はえなわ)などで漁獲され、肉は練り製品の原料となり、肝臓も珍味とされる。さらに肝臓からは耐寒性潤滑油や化粧品に使われるスクアレンがとれるので、産業的に重要となっているが、漁獲過多で資源の減少が危惧(きぐ)されている。
種としてのアイザメ(英名dwarf gulper shark)は、国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧種中の「深刻な危機」(CR)に指定されている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]