スクアレン(読み)すくあれん(その他表記)squalene

デジタル大辞泉 「スクアレン」の意味・読み・例文・類語

スクアレン(squalene)

サメ肝油に多量に含まれる成分化粧品医薬品に使われる。スクワレン。→スクアラン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スクアレン」の意味・わかりやすい解説

スクアレン
すくあれん
squalene

鎖状炭化水素C30H50で、1分子内に6個のイソプレン残基をもつ。1916年に辻本満丸(つじもとみつまる)によってサメの肝油から発見された。水素添加で飽和炭化水素スクアランC30H62になり、これは耐寒潤滑油に利用される。生体内では、2分子のファルネシル二リン酸C15H28O7P2(大型のテルペンの生合成やある種のタンパク質やヘム側鎖の修飾反応に関与)の頭どうしが縮合で合成される。哺乳(ほにゅう)動物にも少量みいだされる。スクアレンは、モノオキシゲナーゼ等の働きでステロイドの四環式骨格を形成し、コレステロールの前駆体を形成する。モノオキシゲナーゼは、オキシゲナーゼの一種で、分子状酸素の酸素原子1個を基質に導入する反応を触媒する。

[若木高善]

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改訂新版 世界大百科事典 「スクアレン」の意味・わかりやすい解説

スクアレン
squalene

多くのサメ,とくにフジクジラカラスザメ,カスミザメなどの深海性のサメの肝油の不ケン化物などに存在する不飽和炭化水素。1916年辻本満丸によって発見された。スクアレンは動物界から初めて取り出されたイソプレン系化合物で,その生合成経路の面からもきわめて興味あるものである。構造的には,図の構造式に示すような6個のイソプレン骨格が分子中央で対称に,かつ各3分子が頭-尾結合をしたものである。

 無色かつ無臭で,沸点270~275℃(15mmHg ),凝固点-75℃,比重d415=0.8578~0.8591の油状物質。広い温度範囲で油性があり,かつ生体への吸収性もよく,化粧品,医薬品の基材として用いられる。また精製スクアレンは高血圧防止用肝油として供される。水素添加したものは粘度特性の優れた耐寒性潤滑油の原料にも用いられる。
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化学辞典 第2版 「スクアレン」の解説

スクアレン
スクアレン
squalene

二重結合を6個(2,6,10,14,18,22位),メチル基を6個(2,6,10,15,19,23位)もつC30H50(410.73)のイソオレフィン.サメの肝油中に多量含まれ,その不けん化物から精製される.わずかに快香をもつ液体.沸点252~254 ℃(666 Pa),262~264 ℃(1333 Pa).凝固点-75 ℃.0.8559.1.4965.水素化してスクアランが製造される.[CAS 111-02-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スクアレン」の意味・わかりやすい解説

スクアレン
squalene

化学式 C30H50 サメの肝油中に存在する。わずかに芳香のある液体炭化水素。沸点 105℃ (0.17mmHg) ,凝固点-75℃。深海産のさめ肝油から減圧分別蒸留によって得られる。植物油や動物の肝臓などにも少量含まれている。生体内では酢酸からつくられることがわかっており,またステロイドや五環式トリテルペン (アミリン系など) の前駆物質となることが明らかにされている。

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栄養・生化学辞典 「スクアレン」の解説

スクアレン

 C30H50 (mw410.73).

 イソプレンを構成単位とする化合物で,コレステロール合成の代謝中間体.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のスクアレンの言及

【ウバザメ(姥鮫)】より

…卵胎生。肉はほとんど利用されないが,肝臓中に含まれるスクアレンは化粧品などの原料になるので漁業の対象となる。【谷内 透】。…

【辻本満丸】より

…30年退官するが,その後も嘱託としてとどまり,広く動植物油脂化学に関する研究を続ける。とくにサメ肝油中の不飽和炭化水素の研究は著名で,1916年にその組成を決定し,スクアレンと命名した。この研究により18年に日本化学会桜井賞を受賞。…

※「スクアレン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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