改訂新版 世界大百科事典 の解説
アウストラロピテクス・バールエルガザリ
Australopithecus bahrelghazali
鮮新世の猿人の一種。1993年にフランスのポワティエ大学のブルネM.Brunetによって,チャド共和国のコロ・トロKoro-Toro地域のバール・エル・ガザル谷で発見された下顎骨であり,これが模式標本(KT 12/H 1)。アウストラロピテクスは〈南のサル〉,バールエルガザリは地名バール・エル・ガザルのこと。ブルネは亡くなった研究者の名にちなんでアベルAbelという愛称を付けた。いわゆる華奢型猿人に含まれる。年代は生物相の対比から350万~300万年前と推定されている。顎先(オトガイ)の傾斜が弱いこと,下顎小臼歯の歯根が他のアウストラロピテクスのように3本ではなく2本であることなど若干の特徴を除くと,アファレンシスとよく似ているので,アファレンシスの地域変種ではないかともいわれる。発見されている化石がわずかなので,詳しくは不明。この化石の意義は,それまで大地溝帯を中心とする東アフリカと南アフリカに限局されていた猿人化石が,大地溝帯の遙か2500キロも西方で発見されたことである。
→アウストラロピテクス・アファレンシス →イーストサイド・ストーリー →猿人 →華奢型猿人
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報